2006年11月10日

冠詞theの基本

今回は、日本人が最も不得意とする冠詞について、特にtheの基本的な意味について説いてみたい。なるべく、高校一年生レベルの文法知識さえあれば分かるように、できれば中学生でも理解できるように、やさしく説くつもりである。また、これから説くのは、何ら言語学的な専門知識を踏まえたものではないことを予めお断りしておく。あくまで、大学入試レベルの英作文を解くに必要なレベルで、冠詞theを整理しておきたいということである。

僕自身は、高校時代に参考書を読んでも、先生の説明を聞いても、どういう場合にtheをつけるのか、どういう場合にa(n)をつけるのか、サッパリ理解できなかった。それもそのはずである。僕が高校時代に使っていた『改訂版 基礎からの総合英語』(数研出版)には、「定冠詞の用法」として、次の12個が列挙されている。

1)前に出た名詞
2)当事者間で明白な場合
3)句・節で限定された名詞
4)種類全体
5)唯一無二と考えられるもの
6)by the+単位
7)the+最上級
8)the+序数
9)the same+名詞、the only+名詞
10)the+形容詞・分詞=人々を表す
11)the+単数普通名詞=抽象名詞
12)the+固有名詞


それぞれに例文とその訳がついているのだが、端的にいえば、ナンノコッチャという感じである。一番の問題は、theの基本的な意味を一切説かずに、さまざまな用法を平面的に列挙している点である。

最近の参考書は、ここまでひどくはない。実際、僕が使っていた参考書の改訂版に当たる『新訂版 基礎からの新総合英語』(数研出版)には、定冠詞は「基本的には『特定のもの』を表す」と基本の意味を説いた上で、まずは次のように4つに分類している。

a)話し手と聞き手が共通に理解している特定のものに
b)語・句・節によって特定のものに限定された名詞に
c)総称のthe(種類全体を表すthe)など
d)その他


その上で、旧版の1)〜10)をその下位項目に分類している。具体的には、a)に1)2)を、b)に3)7)8)9)を、c)に4)10)を、d)に5)6)を振り分けている。

確かに、基本の意味を説いた上で、10個の項目を、それなりの共通性にしたがって4つに分類した努力は認めてもいい。しかし、分類の仕方が現象に引きずられており、はっきりいえば非論理的でさえある。簡単にいえば、「総称のthe」が「特定のもの」とどうつながっているのか全く不明だし、theの用法の一番典型的な「唯一無二と考えられるもの」を「その他」に分類する混乱ぶりである。

また、これはそこそこいいと僕も評価している『総合英語Forest』(桐原書店)など、他の参考書にも共通していることなのだが、「特定のもの」というのがどういうことか、説明がない。僕も高校の時に先生から、「theは特定のものを表すんだ」というような説明を受けた記憶があるが、なんのことかサッパリ理解できなかった。

では、theの基本の意味とは何か? これは、a(n)との対立物の統一で理解するのがよい。a(n)とは、「複数あるもののうちのひとつ」という意味である。それに対してtheとは、「ひとつに決まる」という意味である。ヨリ正確にいうなら、「話し手と聞き手、あるいは書き手と読み手が共有する世界の中で、ひとつに決まる」ということである。「ああ、あれのことね」とひとつに決まるならtheを、ひとつに決まらなかったらa(n)をつける。

例えば、book(本)といったとき、本は世界中に非常にたくさん存在しているから、その内の一冊を指すのはa bookである。ところが、机の上に一冊だけ置いてある本を指さしてbookという場合は、本といえば、その机の上にある、指さされている、その本一冊に決まるから、the bookである。

したがって、theの用法を分類する場合、ひとつに決まる、その決まり方で分けるのが分かりやすい。僕は現段階では、以下の4つに分類している。


@現実の世界にはじめから1つしかないから、ひとつに決まる

the sun, the moon, the earth, the sea, the world, the skyなどである。このようなものは、はじめからひとつしかないから、theをつけるのである。例えば、sun(太陽)といえば、あの、昼間空で輝いている大きな天体である。それ以外のsunはない。つまりひとつに決まるわけである。だからsunにはtheをつける。

ちなみに、ナメック星(鳥山明のマンガ『ドラゴンボール』に出てくるピッコロさんの故郷)には太陽が3つあるらしい。したがって、ナメック星人が英語を話すとすれば、太陽はa sunである。


A状況から、ひとつに決まる

これは例えば、指を指しながらOpen the window.(窓を開けてください。)などという場合である。指を指しているのだから、窓はひとつに決まるわけである。あるいは、そもそも窓がひとつしかない部屋にいる場合は、二人が共有している世界=その部屋では、「窓」といえばひとつに決まるのだから、やはりthe windowである。

窓がいくつかある部屋で、一人がOpen a window.といえば、「どれでもいいから、ひとつの窓を開けてください」という意味になる。


B話の中にすでに出てきたから、ひとつに決まる

例えば、一人が「昨日京都の公園に行って、一枚の写真を撮ったんだよ。」といい、もう一人が、「その写真見せて。」と答えたとする。それを英語にすると、次のようになる。

A: Yesterday I went to a park in Kyoto and took a picture.
B: Show me the picture.

Aさんが話し終えた時点で、二人の頭の中には、京都の公園と、そこで写真を撮っているAさんの姿が描かれる。この二人が共有している世界の中には、写真といえば、Aさんがそこで撮った写真一枚しかない。だから、Bさんが「写真」という場合には、the pictureなのである。

このように、聞き手や読み手が、話し手・書き手に観念的に二重化しており、その共有している観念的な世界の中ではひとつに決まるという場合も、theをつけるわけである。だから、そのあと写真を見せながらAさんが、「公園はとても美しかったよ」などという場合は、The park was very beautiful.になる。共有している観念的な世界で、「公園」といえば、昨日自分が行った、京都の公園しかないからである。

ところが、話し始めの段階では、共有している観念的な世界などない。共有しているのは、現実的な世界である。だから、その場合には、現実世界にひとつしかなければ、theがつき、いくつかあるうちのひとつならa(n)がつくわけである。Aさんの初めのセリフの中の「公園」がa parkになっており、「写真」がa pictureになっているのは、公園といってもいくつもあり、そのうちの一つに行ったからであり、写真といってもいくつもあり、そのうちの一枚をとったからである。


C修飾語によって、ひとつに決まる

犬といっても、世界中にはたくさんいる。仮に100万匹いるとしよう。一匹の犬は、たくさんいるうちのひとつだから、a dogである。その中で、黒い犬は10万匹だとしよう。「黒い」という修飾語(詳しく説明する言葉)をつけることによって、範囲が狭まり、数が減ったわけである。それでも、黒い犬もいっぱいおり、そのうちの一匹だから、a black dogというようにaがつく。ところが、世界にたった一匹だけおしゃべりな犬がいたとしよう。暇があれば、近所のおばさんたちとぺちゃくちゃ世間話をする犬である。この場合、「おしゃべりな」という修飾語をつけると、一匹の犬に決まってしまう。だから、その場合は、the talkative dogである。

つまり、修飾語をつけることによって、ひとつに決まるなら、その名詞にはtheがつくのである。Tokyo is the capital of Japan.(東京は日本の首都です。)であるのに対して、Tokyo is a city of Japan.(東京は日本の都市です。)になるのはなぜか、もう分かるはずである。capital(首都)といっても世界中にいくつもあるが、of Japan(日本の)という修飾語をつけると、ひとつに決まってしまう。だから、theをつけるのである。これに対して後者では、of Japanという修飾語をつけても、city(都市)はひとつに決まらない。大阪市もあれば名古屋市もある、札幌市も、仙台市もある。だから、そのうちのひとつという意味で、aをつけるわけである。

最初の参考書で見た7)8)9)は、修飾語によってひとつに決まるパターンである。例えば、最上級がつけば、「一番〜な」という意味なのだから、一番はこれとひとつに決まる。「私のクラスで一番背の高い少年」はthe tallest boy in my classである。一番背が高いのは、ヒロシ君とかオサム君とか、一人に決まるからである。


以上見てきたように、現実的な世界であれ、観念的な世界であれ、話し手と聞き手、書き手と読み手が共有する世界の中で、「ああ、あれのことね」とひとつに決まればtheをつけ、ひとつに決まらなければa(n)をつけるのである。これがtheの基本であって、まずはこの基本を徹底的に習得させるべきである。その上で、この基本に当てはまらない特殊な事例を、必要に応じて個別に暗記させればよい。

それなのに、初めに示した『改訂版 基礎からの総合英語』のように、基本的な用法も、例外的な用法も、ひっくるめて平面的に羅列などするから、かつての僕のように「こんないっぱい意味があるのか。ワケが分からない」などとなってしまうのである。

長くなってしまったので、今回はこれまで。とにかく、theは「ひとつに決まる」。
posted by 寄筆一元 at 15:15| Comment(8) | TrackBack(0) | 塾講日誌、英語の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月10日

関係詞の基本

今回は関係詞のお話である。

高校生に英語を教えていると、関係詞がさっぱり分からないという生徒もいれば、関係詞だけは分かるという生徒もいる。どうしてこのような両極端な差が生まれるのか、疑問だったが、最近その理由がだんだん明らかになってきた。

先に結論を言えば、関係詞を理解するためには、SVOCといった文型の知識と、名詞、形容詞、副詞といった基本的な品詞の知識、それに両者の関係に関する知識が必須なので、こういったごく基本的な知識をしっかりと定着させている生徒は関係詞がすんなりと理解でき、そうでない生徒は全く理解できないということになってしまっているのである。

では、実際に関係詞の解説をしていく中で、以上のことを詳説していきたい。

まず関係代名詞である。関係代名詞には、次の三つの働きがある。

@2つの文をつなぐ接続詞の働き
A前の名詞を指す代名詞の働き
B前の名詞を修飾する形容詞の働き
(Bのみ、関係代名詞節全体の働きである)

まず、関係代名詞は、二つの文をつなぐ働きがあるという点が、一番重要である。逆に言うと、関係代名詞を使った文は、必ず二つの文に分けられるのである。では、二つの文を関係代名詞を使ってつなげてみよう。

The boy is Tom. Mary likes him.
「その少年はトムだ。メアリーは彼が好きだ。」
→ The boy whom Mary likes is Tom.
  「メアリーが好きな少年はトムだ。」

二つの文をつなげるには、まず二文目の代名詞が指している名詞を確認する。この文だとthe boyである。これが先行詞となる(念のためにいっておくと、固有名詞は普通先行詞にならない)。次に、二文目の代名詞を関係代名詞に変えて、その文の文頭に持ってくる。代名詞はhim、つまり人で目的格だから、whomに変えて文頭に持っていくのである(驚くべき事に、関係代名詞の表すらまともに覚えていない生徒がいた。これでは関係詞を理解することなどできるはずもない)。すると、二文目が、whom Mary likesとなる。最後にこの変形した二文目を、先行詞の直後に挿入すればいいのである。

ここで関係代名詞の三つの働きを確認しておこう。まず@であるが、これは明らかに二つの文をつないでいるのであるから、問題はなかろう。Aである。これは、関係代名詞whomがもともとは代名詞himであったことを考えれば容易に了解できるはずである。したがって、もともとの二文目、つまり関係代名詞節だけを見れば、

whom Mary likes
O    S    V

という構造になっているわけである。関係代名詞は、動詞likesの目的語になるから、目的格のwhomになるということが分からなければならない。最後にBに関しては、今とりだした関係代名詞節の部分が、前の名詞(先行詞)the boyを修飾しているということである。「少年は少年でも、どういう少年かというと、メアリーが好きな少年」という具合に、the boy「少年」という名詞を詳しく説明しているわけである。名詞を詳しく説明する(修飾する)品詞は形容詞だから、関係代名詞節はカタマリとして、形容詞の働きをしているのである。

なお、固有名詞が先行詞とならない理由もここにある。固有名詞を形容詞で修飾することなど見たことがないであろう。例えば、「背の高いトム」という意味で、tall Tomなんて言葉は、見たことがないはずである。要するに、固有名詞は修飾できないのであるから、もちろん、関係代名詞節でも修飾できない、つまり、固有名詞は先行詞とはならないのである。

閑話休題、以上が関係代名詞の仕組みである。これだけ読んでいただいても、(代)名詞や形容詞といった品詞の知識なしには、すんなりと理解できないことが分かっていただけると思う。

次に関係副詞を検討してみたい。関係副詞の働きは、以下の三つである。

@2つの文をつなぐ接続詞の働き
A場所・時・理由などを表す副詞の働き
B前の名詞を修飾する形容詞の働き
(Bのみ、関係副詞節全体の働きである)

ほとんど関係代名詞の働きと同じであるが、Aだけが違う。したがって、関係代名詞と関係副詞はどう違うのかと問われれば、それは代名詞と副詞の違いである、ということになる。以下、具体的な例文で考えていこう。

That is the place. I met him there.
「そこが例の場所だ。私はそこで彼に出会った。」
→ That is the place where I met him.
  「そこが、私が彼に出会った場所だ。」

二つの文をつなげる手順も、関係代名詞とほぼ同じである。すなわち、二文目の副詞が指している場所・時・理由などを表す名詞を確認する。今回の例文では、副詞thereが指しているのはthe placeである。これが先行詞となる。次に、二文目の副詞を関係副詞に変えて文頭に持ってくる。今回は場所を表す副詞であるから、whereに変えて文頭に持ってくるわけである。すると二文目は、where I met himとなる。最後にこの変形した二文目を、先行詞の直後におけば完成である。

三つの働きも確認しておこう。まず、二つの文をつなげたのだから、@は問題ない。また、Aに関しては、関係副詞whereは、もともとthereであったのだから、これは副詞の働きである。

where I met him
 M  S  V   O

関係副詞節、つまりもともとの二文目は、上のような構造になっている。最後にBは、この関係副詞節が前の名詞the placeを修飾しているのだから、やはり形容詞の働きをしているわけである。

このように見てくると、関係代名詞と、関係副詞の違いも明らかになってくる。関係代名詞節では、関係代名詞の後にくる文が、(代)名詞の欠けている不完全文であるのに対して、関係副詞節では、関係副詞の後にくる文が、(代)名詞のそろった完全文である、という違いである。もう一度関係詞節を引用してみよう。

whom Mary likes
O    S    V

where I met him
 M  S  V   O

上の関係代名詞節の方では、関係代名詞whomに続く文に着目すると、Mary likesとなっており、動詞likesの目的語となる(代)名詞が欠けている。つまり不完全文が来ているわけである。これは当然である。関係代名詞節の成立過程を理解できていれば、もともとlikesの目的語であったhimは関係代名詞に代わって前に出ているのであるから、その関係代名詞の後ろの部分だけを見れば、不完全な文に決まっている。

これに対して下の関係副詞節の方は、関係副詞whereに続く部分は、I met himとなっており、(代)名詞が全てそろった完全な文になっていることが分かる。これも当然である。もともとのI met him there.という文の副詞部分であるthereが関係副詞になって前に出ただけなのであるから。副詞というのはSOCといった文の要素にはならない修飾語であるから、これがなくなっても、文は完全に成立しているのである。

図解すると、関係代名詞と関係副詞の違いは以下である。初めにある「名詞」とは、もちろん先行詞となる名詞のことである。

名詞 関係代名詞+不完全文(=名詞・代名詞が欠けている)
名詞 関係副詞 +完全文(=名詞・代名詞が全てそろっている)

例えば良くある問題で次のように、カッコの関係詞を入れさせる問題がある。

This is the place ( ) I visited last year.

関係詞の仕組みを良く理解していない生徒は、先行詞が場所だからwhereが正解、などと単純に考えてしまいがちである。しかし正解は、関係代名詞which/thatである。なぜなら、visitという動詞は他動詞であり、後ろに目的語を必要とするのに、その目的語となる(代)名詞が欠けている。つまり、(  )に入る関係詞の後ろには不完全文が続いているから、(  )には関係代名詞が入るのである。当然、この種の問題を解くときには、visitが他動詞であること、他動詞というのは目的語をとる動詞であること、目的語というのは品詞でいえば(代)名詞であること、などといった、高校入学の初めの頃に習うはずの超基本的な知識が要求される。この超基本がしっかり身についていなければ、以上の解説をすんなりと理解することはできないのである。

これまでの説明で、「関係詞を理解するためには、SVOCといった文型の知識と、名詞、形容詞、副詞といった基本的な品詞の知識、それに両者の関係に関する知識が必須」と初めに書いたことの意味が分かっていただけたと思う。自分としても、英語は知識を基礎からしっかりと積み上げていくことなしには、理解が進まないということを再確認できた。

以上のような関係詞の基本を押さえた上でないと、その特殊なあり方である継続用法や、関係代名詞what、あるいは関係副詞の省略・先行詞の省略、さらには複合関係詞などが少しも理解できないということになる。一般性を押さえた上で、特殊性をきちんと整理しながら理解していけば、それほど難しくもない単元である。しかし、一般性がしっかりと把握されていなければ、それこそ千差万別に見えてしまって、全く論理性のない、ワケの分からない知識が平面的に並んでいるだけであるかのような観を呈することなってしまうのである。
posted by 寄筆一元 at 14:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 塾講日誌、英語の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月22日

センター試験英語

昨日、塾でセンター試験の英語の問題をもらったので、帰宅後、お酒を飲んで酔っぱらった状態でチャレンジしてみた。

最初にリスニングをやった(ネット上に音声がアップされていた)。TOEICと較べると驚くほど簡単。以前、高校入試対策としてリスニングの授業をやっていたが、その時の教材と較べても、まだ簡単な気がした。もちろん語彙レベルはセンター試験の方が上だが。形式も、試行試験と同じ。しっかりリスニング対策をしてきた生徒にとっては、かなりやさしく感じたのではないだろうか?

次に筆記試験の方をやった。80分の試験だが、60分かかった。最初にも強調しておいたように、酔っぱらっていたから。

設問別に分析してみよう。同時に、勉強法や解き方のテクニックなども紹介したい。

第1問のアクセント・文強勢問題。それほど難しくはないと思う。アクセントなどは、日頃からCDなどを使って単語を「音」として覚えていれば、それで十分。アクセントの規則などに頼ってもいいが、負担が多くなる割には実用的ではない。あくまで補足として、最低限のルールを覚えておけばいいだろう。文強勢。これは簡単。下線を引いた英文の中で、もっとも強調して発音される単語を選ぶ問題だが、これは、「文ではなく、一単語で言うとすると、どの単語になるか?」を考えればいい。これが一番重要な単語になるから、当然強く発音される。もう少し正確にいうと、新情報や対比されている単語が強く読まれる。

第2問。Aは文法・語法問題。基本的な文法事項や熟語を問うものが多い。ただ、問5だけはかなりマイナーか。こんな問題だ。

How did it (      ) about that summer in Tokyo is hotter than it used to be?

1.come 2.take 3.happen 4.occur

これは、“How did it come about that+平叙文?”で、「どうして〜?」というある程度決まり切った言い方である。メジャーな“How come+平叙文?”はこれの短縮形である。したがって、1.comeが正解となる。おそらくこんな知識を持ち合わせている受験生は少ないのではないか。しかし、こんな知識がなくても、この問題は解ける。

まず、文の主語がitであることとthatの後ろが完全文であることから、it……thatの、仮主語・真主語構文であることが分かる。次に動詞の部分。bring about〜=「〜をもたらす」という基本の熟語さえ知っていれば、その自動詞形がcome about=「〜がもたらされる、生じる、起こる」だと分かるはず。したがって、選択肢1.comeを入れたら、「that以下のことがどのようにして起こったのか?」という意味になり、これでいけそうである。

選択肢3.happenと4.occurはいずれも「起こる」という意味であるが、これだと後ろのaboutの説明が付かない。しかも、両者とも同じような意味である(もちろん、仮主語・真主語構文でhappenを使うと「たまたま〜する」という意味になるが、これも元の「起こる」から説明できる)から、片方が正解なら、もう片方も正解、よって、両者とも不正解、と推測できる。選択肢2.takeは他動詞であるから、入りようがない。

以上のように、基本知識を元に考えることができれば、正解に到達できる。だから、基本知識をこのような形で使いこなせるように、活性化した状態で頭に入れておくことが大切である。もっとも、満点を狙うのでなければ、こんな問題は間違えてもいいが。

ついでに蛇足ながら述べておくと、基本の熟語であるbring about=「〜をもたらす」すらも、丸暗記する必要はない。bring=「〜を持ってくる」、about=「あたりに、周りに」であるから、bring about=「〜をあたりに持ってくる」となり、「〜をもたらす」という意味になるということは、容易に推測できるのである。選択肢にも出てきたtake〜aboutは、同じように考えるなら、「〜をあたりに連れて行く→〜を案内する」という意味である。基本動詞や前置詞などのイメージを豊富にしておくと、わざわざ熟語として覚える量も減ってくるし、覚えるのもイメージの助けを借りてヨリ容易になるというものである。

第2問のBは対話文完成問題。会話でよく使う特定の言い回しをしっかり押さえておけば問題ない。

Cは語句整序問題。パーツの与えられている英作文である。この種の問題は、文型の知識と句・節の知識を、活性化した状態で把持できていれば、非常に易しい問題といえる。逆にいうと、英語が本当に分かっているかどうかを見極めるためには、この語句整序問題が非常に都合がよい。テクニックとしては、並び替える語句の中でつながるものは先にセットにしておくことと、後ろから判断して、一番最後に入るものを確定できれば確定することである。こうすれば順列の数が減る。5つの語句の並び替えだが、ワンセットできて、最後に入るものが確定すれば、残り3つの順列は、3!=6通りである。これなら、片っ端から並べても、そんなに時間はかからない。

第3問は、語句補充・文整序・文補充である。ここははっきり言って、一定以上の英語力があれば、あとは国語力の問題である。論理展開の流れが分かるかどうかの問題である。それも、それほど高級な能力はいらない。高校入試の国語の問題で9割くらいとれるの実力があれば、十分である。端的に言えば、言い換え・具体化、対比関係、因果関係、並列関係がしっかり把握できればよいのである。

第4問、第5問、第6問は長文読解。第4問が図表読み取り、第5問が会話文、第6問が物語文である。共通していえることは、先に設問をさらっと読んでおく方がいいということである。そうするメリットは二つある。

まず第一に、おおよそのテーマが分かる。新聞で言えば、見出しを見てから本文を読むようなものである。そうすると、だいたいの全体像が押さえられているから、本文が格段に読みやすくなる。逆に見出しを見ずに、いきなり本文を読む場合を想定して欲しい。一体何について書いてあるのか、探りながらの読解となり、読むスピードも遅くなるし、理解も悪くなるはずだ。

先に設問を読む第二のメリットは、「何のために読むのか」という問題意識が明確になることである。要は設問を解くために読むのである。設問を解くのに必要な情報は、詳しく・正確に読まねばならないが、そうでない部分はだいたいでいいのである。設問を先に読んでおき、把握すべきポイントがはっきりしていれば、読みにメリハリがつき、速読ができる。設問に関係する重要な部分は、ゆっくり落ち着いて正確に読めばいいし、関係のないところはとばし読みでいいのである。そして読みながら、解ける設問には答えていく。こうすると、ワーキングメモリに余計な負担をかけずに済む。

今回の問題でいえば、たとえば第5問のBとCを見れば、Owenが今日車で来て、絵にあるどこかに駐車してきたということが分かる。さらにBの車の絵をよく見ると、すべての車に熊のぬいぐるみらしきものが乗っているが、その場所が違う。さらに傷が付いている車と付いていない車がある。だから、本文中で絶対にこのことに言及されるはずである、ということが事前に分かる。

また第6問では、設問Aを読んでいけば、おおよそのストーリーが分かってしまう。若い男と妹がプールを作る、母と子どもたちがどこかへ向かおうとしているときにピールさんに出会う、ピールさんはその三人が医者のところへ行くのを助ける、といった具合である。これらの情報と、この第6問の物語は概していいお話であるということを踏まえて、本文を読み進めるのである。おおよそのことが分かっているから、かなり読みやすくなる。

僕自身がセンター試験を受けたときは、上記のテクニックを巧みに活用した。何しろセンター試験の英語は時間が足りないから、テストの問題冊子が配布された時点で、その冊子を裏返すのである。すると、最後の第6問の、最後の設問がうっすら透けて見えるのである。最後の設問は当時から、「次の10個のうち、本文の内容とあっているものを4つ選べ」みたいな問題であった。その10個の選択肢を文字が反転して読みづらいのを覚悟の上で、しっかり読んでいくのである、テストが始まる前に。この10個の選択肢の英文は、もちろん正解が4つしかないのであるが、不正解の英文でも、本文とまったく関係のないことが書かれていることはない。したがって、10個も読めば、そのストーリーがだいたい分かってくるのである。こういった予備知識をもって本文を読めば、先ほどから何度も主張しているように、格段に読みやすくなる。しかも、その設問を読む時間はテストが始まる前なのであるから、その時間も節約できるのである。こうして僕はセンター試験に臨み、時間ぎりぎり一杯で最後の問題を終え、見事(?)満点を獲得できたのである。不正行為だと言われるかもしれないが、問題冊子をひっくり返してはいけないとか、問題冊子に目をこらしてはいけないとかいう指示はどこにもなかったし、ばれなければいいということもあるので、問題はなかろう。残念ながら、現在では、問題冊子の白紙部分を二重か三重かにして、裏からも読めないようになっているらしいので、この不正行為らしきものはできないようだ。

設問別に分析してみたが、全体としてはセンター試験英語はやさしい。しかし、時間が足りない。だから対策としては、文法・語法問題の典型的なものは、見た瞬間に答えが分かるという状態にしておいて、とにかく最後の方にある長文問題にできるだけ多くの時間が割けるようにしておく。また、英語長文(やさしいものでよい)にできるだけ親しんで、なるべく速く読めるようにしておく、ということが肝心であろう。
posted by 寄筆一元 at 17:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 塾講日誌、英語の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月23日

比較の構造

英語講師らしく、久しぶりに英語の話でも書いてみよう。今回のテーマは「比較」である。

英語で<比較級>や<原級>を用いた文が、二つの文を合体させてつくられているということはよく知られている。しかし、合体のさせ方が二種類あるということは、あまり知られていないような気がする。まずはよく知られている方から紹介してみたい。

Tom is stronger than Mike.
(トムはマイクよりも強い。)

Tom is as strong as Mike.
(トムはマイクと同じくらい強い。)

この二つの文、すなわち<比較級>と<原級>を使った文が、どのようにしてつくられたのか見てみよう。

両者はもともと次の二つの文が合体してできた文である。

Tom is X strong.
Mike is Y strong.

XとかYとかいうのは、直後のstrongという形容詞の程度を表す副詞であると理解していただきたい。つまり「トムはXくらいの強さだ。」「マイクはYくらいの強さだ。」という文である。

ここで、X>Yのとき、X strongを比較級にかえ、Y strongをthanにかえて前に出す。そして両者を合体させるのである。そうすると、

Tom is stronger than Mike (is).

という文ができあがる。最後のisにカッコがついているのは、省略可能という意味である。

ではX=Yのときはどうするのか。今度は、X strongの部分をas strongにかえ、Y strongをasにかえて前に出した上で、二文を合体させるである。そうすると、

Tom is as strong as Mike (is).

という文になるわけである。同じく最後のisは省略可能である。

このタイプの合体のさせ方を「関係詞型」と呼んでおこう。二つ目の文に存在する、一文目と共通する語を何らかの語にかえて前にもってきた上で合体させる、という点が共通だからである。念のために関係詞の例を出しておこう。

I'm reading a book.
I borrowed it from the library.

この二文を合体させるとき、「二つ目の文に存在する、一文目と共通する語」、すなわちit(=a book)を、関係代名詞whichにかえて前にもってきた上で合体させる。そうすると、次のような文になる。

I'm reading a book which I borrowed from the library.

この合体のさせ方と、先ほどの比較における合体のさせ方の共通点を確認していただきたい。先ほどの比較の場合には、「二つ目の文に存在する、一文目と共通する語」というのは、(Y) strongである。これを、thanやasにかえて前にもってきた上で合体させていたことを思い出してほしい。

よく市販の大学受験参考書などでは、Tom is stronger than Mike is strong.という誤った文を示して、「最後のstrongは絶対に省略しなければならない」などと無根拠に解説している。しかし、「関係詞型」の接続(合体のさせ方)ということを理解していれば、そもそも「省略」という言い方自体がおかしいことに気がつくはずである。これは、先の関係詞の例文で、itがwhichになって前に出されたように、(Y) storngはthanになって前に出されただけなのであるから。

さて、いよいよもう一つの合体のタイプについてである。これを「接続詞型」と呼ぶ。たとえば、次の文の成立過程を追ってみよう。

She is more shy than modest.
(彼女はつつましいというより、はにかみやである。)
She is as much shy as modest.
(彼女はつつましけれども、はにかみやでもある。)

ポイントは、上の文でshyer(あるいはshier)ではなく、more shyになっている点である。この二つの文は、以下の二文が合体してできたものである。

X:She is shy.
Y:She is modest.

各文の前についているXとYは、その文(命題)の真実性の程度を表す。つまり、「彼女がはにかみやであるということはX程度真実である。」「彼女がつつましいというのはY程度真実である」というような内容である。

ここで、X>Yのとき、次のような合体のさせ方(接続の仕方)をする。

more <she is shy> than <she is modest>.

moreは、真実性の程度を表す副詞muchの比較級である。したがって、<she is modest>という文(命題)よりも、<she is shy>という文(命題)の方が真実性が高いということを表している。このとき、二つの文をつないでいるthanに注目である。先ほどの「関係詞型」とは違って、何らかの語がthanにかわって前に出てきたのではない。純粋に文と文をつないでいるだけである。したがって、この合体のさせ方を「接続詞型」と呼ぶのである。

しかし、このままでは英語になっていない。そこで、慣用的な英語の語順に並び替えて、省略可能な部分(言わなくても分かる部分)をカッコでくくると、次のような文になるのである。

She is more shy than (she is) modest.

次にX=Yの場合である。その場合は次のようになる。

as much <she is shy> as <she is modest>.

これは原級を使って、二つの文(命題)の真実性が同じくらいであることを表している。これも、適切な並び替えを行い、省略な納な部分をカッコに括ると、次の文になる。

She is as much shy as (she is) modest.

なお、この文の否定形が、She is not so much shy as medest.(彼女ははにかみやというよりむしろつつましい。)である。これが、熟語として扱われているnot so much A as B(AというよりむしろB)の構造である。

これで、最初に示した二つの文の成立過程が明らかになったわけである。「接続詞型」のポイントは真実性の比較という点であった。

以上のように<比較級>や<原級>を使った文の合体のさせ方(接続の仕方)には、「関係詞型」と「接続詞型」があるのである。両者の違いは比較基準の違いといえるだろう。つまり、「関係詞型」の場合は、比較基準が文の中に明記されている。先ほどの例であれば、トムとマイクを何によって、どんな点から比較しているのかといえば、それはstrongの程度であった。そして、strongという言葉は、もちろん英文中に出てきていた。これに対して「接続詞型」は、二つの命題の真実性を比較基準とするもであった。先ほどの例でmore shyとなっているのは、shyの程度を比較基準としているのではなく(もしshyを比較基準にしているならshyerとなるはず)、二つの命題の真実性の程度を比較基準としており、その程度を表す副詞muchの比較級moreが、たまたま慣用上shyの前に来ていたからであった。

では宿題。次の比較級を用いた二つの文は、それぞれ「関係詞型」か、それとも「接続詞型」か。

A whale is no more a fish than a horse (is).
You can no more solve the problem within ten minutes than I would walk around the earth on my hands.

次回は、no more thanとnot more thanの違いに触れつつ、この宿題を考えてみたい。また今後は、定冠詞theの本質、助動詞の二種類の意味、いわゆる「未来時制」、分詞の後置修飾などに触れていこうと思っている。
posted by 寄筆一元 at 16:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 塾講日誌、英語の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月06日

夏休み講習――英文法の構造

塾では夏休み講習の真っ只中。夏休み講習から参加している生徒もいるが、元から塾に来ている生徒との差が大きく、非常にやりにくい。

例えば品詞。英語では動詞の他に重要な品詞として、名詞、形容詞、副詞があり、この三つがしっかり区別できるかどうかが、英語が読めるかどうかの分水嶺となるといってもよい。単に単語レベルで識別できるだけでなく、カタマリとして、すなわち句や節のレベルでも、しっかり区別できることが重要である。句や節のレベルに限定するなら、名詞とは主語や目的語、補語(すなわち文の要素)になるカタマリであり、形容詞とは直前の名詞を修飾(詳しく説明)するカタマリであり、副詞とはそれ以外のカタマリ(主に動詞を修飾するカタマリ)である。今日の授業で、新しく入ってきた生徒はこれらの区別がしっかりとできていないことが判明した。

念のために確認しておこう。句とはカタマリとして名詞、形容詞、副詞の働きをするものの中で、主語・述語の関係を含まないものである。準動詞句と前置詞句がある。準動詞とは、動詞であるにもかかわらず、名詞、形容詞、副詞として働くものの総称であり、不定詞、分詞、動名詞に分類される。不定詞は名詞、形容詞、副詞の働き、分詞は形容詞、副詞の働き、動名詞は名詞の働きをする。前置詞句は形容詞か副詞の働きをする。

節とはカタマリとして名詞、形容詞、副詞の働きをするものの中で、主語・述語の関係を含むものである。名詞節を導くものとしては、that、if、間接疑問文を導く疑問詞、それに関係代名詞のwhatなどがある。形容詞節を導くものは、大半の関係詞である。残りの接続詞はほぼ副詞節を導くと考えてよい。

こういった英文法の基礎的部分がしっかり理解できていないと、英文法=暗記になってしまう。これでは英語嫌いになるのも当然だ。

持論では、英文法は二種類に大別される。一つは英文読解に必要な英文法であり、もう一つが大学入試の文法問題を解くための英文法である。前者は英語という言語の基礎的なルールのことであり、その中でも五文型と品詞の知識が特に重要となる。後者は「受験英語」として非難の対象となっているような些末な文法知識のことであるが、大学受験のためには必須である。

ここで重要な視点は、前者を基本技としてとらえ、後者をその変化と見ることである。大学受験という敵に立ち向かう際に、数多くの技を丸暗記して臨むのではなく、基本技を徹底的にくり返して完璧にマスターした上で、その基本技を変化させて対応するのである。

まだ具体的には説けないが、英文法の分厚い問題集などをくり返して憶えようとしている受験生を見ると、ちょっとかわいそうになってくる。確かにそういう問題集は、文法問題を解くための文法事項が網羅してあり、憶えることができれば文法問題で高得点が期待できる。しかし、そんなに大量の知識を丸暗記する必要はないのである。事実僕は、文法の問題集としては予備校の薄いテキストを完璧にこなしただけで、センター試験は満点、二次試験の英文和訳・和文英訳でも、文法的に困ることは全くなかった。簡単にいえば、基礎(この基礎も、応用が利く基礎、使える基礎、ということだが)をしっかりとしていれば応用が利くのである。このことを僕の教え子にもわかってもらいたいと思って、授業をしている。

ところで、夏休み講習では、休んだ生徒の補習をしている。補習は、二回目の授業ということで、かなり余裕を持って、しかも前回の反省を活かした授業ができる。補習をしている間に、「ああ、一回目の授業のときは、ここを丁寧に解説していなかったから、分かりにくくなっていただろうな」などと気づくこともしばしばである。立て続けに二回も同じ内容を教えると、その単元の教え方がそれなりに洗練されて、定着する。一年目の僕にとっては、いい修行になっていると思う。
posted by 寄筆一元 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 塾講日誌、英語の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月06日

used to・wouldと助動詞+have+過去分詞

今日は高校一年生に助動詞の発展編を教えた。

まず、「過去の習慣」を表すused toとwouldを説明した。初めから両者の区別を説くと混乱すると思ったので、最初は両方とも「過去の習慣」を表し、「以前は〜だった」と訳せばよいと教えた。そして例文を示したあと、両者の違いとして、1.現在とは違うことを言いたい場合、2.状態動詞(例えばbe動詞やhave)の場合は、used toを用いることを説明した。本当は無生物主語の場合もused toを使うということにも触れたかったが、なんせ偏差値的にはかなり低い高校の生徒であるし、さらに個人的にも英語が不得意な生徒もおり、またそこまでの知識を使わないと解けないような問題もなかったので省いた(ちなみに、自分自身が高校のときに使っていたチャート式『基礎からの総合英語』には、used toが規則的行為、wouldが不規則的行為に用いられるという、古典的(?)区別しか書かれていなかった)。その後問題を解かせると、used toかwouldかを選ぶ問題で、後ろがbeだからused toが正解という問題があった。正しい答えを選択できていたが、「なぜそっち?」と聞いても、しっかり答えられなかった。

次に、特殊な助動詞として、needを教えた。何が特殊かというと、助動詞としてのneedは否定文と疑問文でしか使えないという点だ。参考までに、肯定文のときは本動詞(この言葉自体は使わず、動詞と言っておいた)のneed(s)を使うことに触れた。なお、本動詞には過去形があるが、助動詞の方にはない(同じような使い方をするdareは、助動詞・本動詞ともに過去形がある)とか、否定文・疑問文でも本動詞を使えるとか、そういうややこしいことには一切触れていない。高校生、特にこの生徒のように英語が不得意な子にとっては、肯定文のときには本動詞を使うという時点で、相当ややこしいはずだ。

最後に、助動詞の単元での最頻出事項ともいえる助動詞+have+過去分詞(p.p.)を扱った。初めに次の例文を示した。

He may know it.「彼はそれを知っているかもしれない。」

もっとも、この生徒は、mayに「かもしれない」という意味があることすら、しっかりと覚えてはいなかったのだが。これは、「現在から現在のことを推量している」として、数直線に図示した。次に、

He may have known it.「彼はそれを知っていたかもしれない。」

と書き、このように助動詞+have+過去分詞の場合は、「現在から過去のことを推量している」と一般化して、これも数直線上で図解した。つまり、推量しているのは現在だが、推量している対象は過去のことというわけである。過去のことなら過去形で書けばよさそうだが、助動詞の後ろは原形という決まりがあるので、仕方なく完了形(have+p.p.)で代用している。

ここまでである程度理解してもらえたと読んでいたのだが、イマイチよく分からないという表情にみえる。そこで次にmust+原形(〜にちがいない)の例文とmust+have+p.p.(〜だったにちがいない)の例文と訳を書くと、その時点で「あ〜、なんか分かってきた」という反応が返ってきた。

なるほど具体例というのは一つではあまり意味がないのだと思った。確かに、こちら(指導者)側の認識としては、「現在から過去のことを推量する場合は、助動詞+have+過去分詞」という一般的な原則があって、その具体例としてmayの例文を出している、つまり、全体の中の部分として具体例を出しているのだが、生徒(被指導者)から見ると、一つ具体例を出されただけでは、その一般的な原則がぴんと来ないのである。そもそも原則とか論理とかいうものは、複数の対象の中に潜む共通性をとらえたものであるから、教える際にも、被指導者に実際に複数の対象から共通性を見出すことをやらせなければ、真に理解させたことにはならない。たとえ二つの例文であって、その中から、「なるほど、may have p.p.(〜だったかもしれない)も、must have p.p.(〜だったにちがいない)も、ともに現在から過去のことを推量しているな」というふうに原則が抽出された過程を辿らないと、得心はできないのだ。

mustのあとは、must「〜にちがいない」(肯定的確信)とちょうど逆の意味(否定的確信)になるcannot「〜のはずがない」も同様な使い方があることを例文とともに示した。また、推量とは違うが、同じように「現在から過去のことについて」の判断を示すshould(ought to)+have+過去分詞やneed not+have+過去分詞も解説した。これらはヨリ正確には、現在から、過去において実行されなかった行為に対する後悔や非難を表すといえよう。

授業後、この生徒が、「塾の英語の授業は、時間が早く過ぎるように感じる。学校の授業とか、塾の数学の授業は長く感じるのに」と言っていた。このクラスに関しては、生徒を授業に集中させることに成功していると、素直に喜んでおいていいだろう。
posted by 寄筆一元 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 塾講日誌、英語の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月07日

挿入・省略・同格、名詞、冠詞

今日は塾で、挿入・省略・同格、それに名詞と冠詞の単元をやった。

挿入は、コンマとコンマで囲まれているのがふつうだから、変なところでコンマが出てきたら挿入じゃないかと疑って、次のコンマを探せ、そして、挿入部分はカッコでくくってまずは無視、全体の文の流れをつかむようにしなさい、と教えた。省略は、言わなくても意味が分かるから省略されるという大原則を教えた上で、覚えるべきパターンとして、to不定詞の省略(toだけ残す)と接続詞の後の<主語+be動詞>の省略の二つを挙げた。同格は、名詞を並べるパターン、ofを使うパターン、thatを使うパターンを扱った。

ここまで解説した後、この三つに関する問題を解かせた。うまく解説と問題が対応していたので、授業の流れとしてはいい感じだったと思う。

次に名詞の解説を始めた。名詞は、大きく数えられる名詞と数えられない名詞に分かれること、さらに前者は普通名詞と集合名詞、後者は物質名詞と抽象名詞、固有名詞にそれぞれ分かれることを、図を描いて説明した。このとき、生徒を指名して、それぞれ具体例を挙げさせればよかったと今後悔している。その後、集合名詞だけ特に取り上げて、詳しく説明した。すなわち、「集合体を一つのまとまりとしてみる場合」と「集合体を構成する個々のものに重点を置く場合」にわけて、それぞれfamilyを使った例文を示して使い方を説明したのである。その際、後でちょこちょこっと絵を描いて、それぞれの違いを説明したが、はじめからていねいに絵を描いてそれで違いが分かるようにしておけばよかった。

冠詞は、不定冠詞の基本的な意味と、固有名詞に不定冠詞がつく場合を説明して、定冠詞に入ったところで時間切れとなった。次回は、不定冠詞と定冠詞の違いを、絵で説明したい。たとえば、a penとthe penでは、話し手と聞き手の共有する世界において、どのような違いがあるのか、を絵に描いて説明したい。そして、解説の内容をしっかりと確認できるような問題を用意しておいて、それを解かせたい。
posted by 寄筆一元 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 塾講日誌、英語の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月16日

英語リーダーの学習法

今日の授業後、一人の生徒が残って自習していた。リーダーの教科書を和訳しているのだ。わからないと言ってききに来たので、いろいろと解説した。

その生徒を見ていると、英文を一文読む前に、日本語訳を書き始めているのである。英語は後ろからの修飾語句が多いので、これではうまく訳せない。まずは一文を読んで、構造を理解してから訳すように指示した。

英文の内容を理解することとそれを日本語として訳すことは、相対的に独立している。だから、英文でだいたいの意味が分かったとしても、それを日本語として表現できるとは限らないのだ。まずは英文の構造を理解して、おおよその意味が理解できれば、わざわざ日本語に直す必要はない。しかし、高校二年生くらいの初学者としては、英文の構造が理解できているかどうかを教師側が把握するためには、和訳させるのが手っ取り早い、ということもある。

リーダーの授業はもっていないが、今後のためにリーダーの指導法についても考えておく必要があると思った。また、授業をもたなくても、効果的なリーダーの学習法については、適宜アドバイスしていく必要がある。実は今日、『國弘流英語の話しかた』に載っている清水かつぞーの文章を紹介しつつ、リーダーの文章をくり返し復習する大切さを解説した。今後も折に触れて、説いていきたい。
posted by 寄筆一元 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 塾講日誌、英語の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする