2008年03月25日

D・カーネギー『人を動かす』(創元社)

  


1.読もうと思ったきっかけ

 

南郷継正師範も推薦されたことのある人間関係に関する名著だと聞いたので、4月からの新しい人間関係に応用できると思ったから。



2.内容の要約

 

目次がこの本のエッセンスの8割を語っていると思う。目次を、論旨を明確にした形に多少アレンジしたものを掲載する。そのほか、重要箇所を抜粋する。



PART1
 人を動かす3原則

 

1.批判・非難をせず苦情も言わない

2.率直で誠実な評価を与え重要感を持たせる

3.人の立場に身を置き強い欲求を起こさせる



PART2
 人に好かれる6原則

 

1.誠実な関心を寄せる

2.笑顔を忘れない

3.名前を覚える

4.聞き手にまわる

5.相手の関心のありかを見ぬいて話題にする

6.心からほめて重要感を与える



PART3
 人を説得する12原則
 

1.議論に勝つために議論をさける

2.相手の意見に敬意を払い誤りを指摘しない

3.自分の誤りをただちにこころよく認める

4.おだやかに話す

5.“イエス”と答えられる問題を選ぶ

6.相手にしゃべらせる

7.相手に思いつかせる

8.人の身になってまず相手を理解する

9.相手の考え・要望に同情を持つ

10.美しい心情に呼びかける

11.演出を考える

12.対抗意識・負けじ魂を刺激する

 

 

PART4 人を変える9原則

 

1.まずほめる

2.遠まわしに注意を与える

3.自分の誤りを話してから相手に注意する

4.命令せず質問の形で意見を求める

5.顔をたてる

6.わずかなことでも具体的にほめる

7.期待をかけできたことにする

8.激励し能力に自信を持たせる

9.喜んで協力させる

 

 

付 幸福な家庭を作る7原則

 

1.口やかましくいわない

2.長所を認める

3.あら探しをしない

4.ほめる

5.ささやかな心づくしを怠らない

6.礼儀を守る

7.正しい性の知識を持つ

  

「他人の欠点を直してやろうという気持は、たしかに立派であり賞賛に値する。だが、どうしてまず自分の欠点を改めようとしないのだろう? 他人を矯正するよりも、自分を直すほうがよほど得であり、危険も少ない。」(1-1p.25

 

「人を非難するかわりに、相手を理解するように努めようではないか。どういうわけで、相手がそんなことをしでかすに至ったか、よく考えてみようではないか。そのほうがよほど得策でもあり、また、おもしろくもある。そうすれば、同情、寛容、好意も、おのずと生まれて出てくる。」(1-1p.32

 

「人を動かす秘訣は、まちがいなく、ひとつしかないのである。すなわち、みずから動きたくなる気持を起こさせること――これが、秘訣だ。」(1-2p.33

 

「ところで、仮に家族や使用人に、六日間も食べ物を与えないでおいたとすると、われわれは一種の罪悪感を覚えるだろう。それでいて、食べ物と同じくらいにだれもが渇望している心のこもった讃辞となると、六日間はおろか六週間も、ときには六年間も与えないままほったらかしておくのだ。」(1-2p.44

 

「成功に秘訣というものがあるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場からも物事を見ることのできる能力である。」(1-3p.57

 

「友を得るには、相手の関心を引こうとするよりも、相手に純粋に関心を寄せることだ。」(2-1p.74

 

「友をつくりたいなら、まず人のためにつくすことだ。――人のために自分の時間と労力をささげ、思慮ある没我的な努力をおこなうことだ。」(2-1p.83

 

「われわれは、自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる。」(2-1p.88

 

「家から出るときは、いつでもあごを引いて頭をまっすぐに立て、できるかぎり大きく呼吸をすること。日光を吸いこむのだ。友人には笑顔をもって接し、握手には心をこめる。……すべての物ごとは願望から生まれ、心からの願いはすべてかなえられる。人間は、心がけたとおりになるものである。」(2-2p.100

 

「話し上手になりたければ、聞き上手になることだ。興味を持たせるためには、まず、こちらが興味を持たなければならない。

 相手が喜んで答えられるような質問をすることだ。相手自身のことや、得意にしていることを話させるように仕むけるのだ。」(2-4pp.128-129

 

「人間の行為に関して、重要な法則がひとつある。この法則にしたがうならば、たいていの紛争は避けられる。これを守りさえすれば、友はかぎりなくふえ、常に幸福が味わえる。だが、この法則を破ったとなると、たちまち、はてしない紛争に巻きこまれる。この法則とは――

『常に相手に重要感を持たせること』。」(2-6p.139

 

「……ていねいな思いやりのあることばづかいは、単調な日常生活の歯車にさす潤滑油の働きをし、同時に、育ちのよさを証明する。」(2-6pp.141-142

 

「議論は、ほとんど例外なく、双方に、自説をますます正しいと確信させて終わるものだ。……議論に負けても、その人の意見は変わらない」(3-1p.159

 

"腹を立ててはいけない"――何に腹を立てるか、それで人間の大きさが決まってくる。」(3-1p.165

 

「人を判断する場合、わたしはその人自身の主義・主張によって判断することにしている――わたし自身の主義・主張によってではなく」(3-2p.181

 

「どんなばかでも過ちのいいのがれぐらいはできる。事実、ばかはたいていこれをやる。自己の過失を認めることは、その人間の値打ちを引きあげ、自分でも何か高潔な感じがしてうれしくなるものだ。」(3-3p.189

 

"一ガロンの苦汁よりも一滴の蜂蜜のほうが多くの蠅がとれる"」(3-4p.196

 

「相手をやっつけるよりも、相手に好かれるほうが、よほど愉快である。」(3-9p.239

 

「彼はいつも自主的に仕事をやらせる機会を与えたのだ。決して命令はせず、自主的にやらせる。そして、失敗によって学ばせた。

 こういうやり方をすると、相手は自分のあやまちが直しやすくなる。また、相手の自尊心を傷つけず、重要感を与えてやることにもなり、反感のかわりに協力の気持を起こさせる。」(4-4p.287

 

「ほめことばは、人間にふりそそぐ日光のようなものだ。それなしには、花開くことも成長することもできない。われわれは、事あるごとに批判の冷たい風を人に吹きつけるが、ほめことばというあたたかい日光を人にそそごうとはなかなかしない。」(4-6pp.295-296

 

「要するに、相手をある点について矯正したいと思えば、その点について彼はすでに人よりも長じているといってやることだ。『徳はなくても、徳あるごとくふるまえ』とはシェークスピアのことばだ。相手に美点を発揮させたければ、彼がその美点をそなえていることにして、公然とそのように扱ってやるがよい。よい評判を立ててやると、その人間はあなたの期待を裏切らないようにつとめるだろう。」(4-7p.303



3.自分の意見・感想

 

さすがに世界的ロングセラーであり、邦訳だけでも440万部以上を売り上げている著書だけのことはある。上の抜粋部分だけでも読めば分かるが、万人必読の名著中の名著である。新大学生・新社会人、人間関係に悩んでいる人には特に読んでほしい名著である。

 

訳者のあとがきに、「この本は、一朝一夕に頭だけで書かれたものではない。十五年にわたるカーネギーの指導の現場から生まれてきたもので、著者の説は、すべて実験ずみのものばかりなのである。」とあるように、一つの原則に対して、これでもか、これでもか、というくらい具体例を示して、たたみかけてくる。豊富な事実に裏打ちされているから、非常に説得力がある。具体例は、原則を踏まえた場合の成功例とともに、原則を守らなかった場合の失敗例も挙げている。

 

本書は、カーネギーの挙げる具体例に導かれながら、自分自身の経験を重ねる形で読んでいくことができる。そして、その自分の経験の意味を教えてくれるのである。「ああ、あのとき、失敗したのは、この原則を守らなかったからだな」とか、「あの人が好かれるのは、このためだったのか」とか、である。

 

本書を読んで、人を動かす一番のキーポイントとして強調されていることは、「重要感を与える」ということだと思った。相手の自尊心を傷つけず、相手がいかに重要であるかというメッセージを与える方法を、具体的に説いたのが本書であろう。「笑顔で接する」「名前を覚える」「誤りを指摘しない」「まずほめる」など、少し心がければすぐにできそうなものから、「相手の立場に立つ」「相手の関心を見抜いて話題にする」「相手に思いつかせる」「演出を考える」「遠回しに注意を与える」など、実行するにはそれなりの修練が必要なものまで、様々な方法が提示されている。が、ともかく、こういった著書は読むだけでは意味がない。即座に実行するべきである。

 

本書で説かれている人を動かす原則は、子どもの指導やカウンセリングにも使えるものだと思った。もう少し前に読んでいれば、この原則を生かして、よりよい指導が塾でできたのに、と残念でならない。が、今後、さまざまな場面で人を指導することもあろうし、臨床心理士としてカウンセリングをおこなうこともあろうから、これらの原則は技化しておく必要がある。原田隆史なんかは、すべて技化している印象がある。

 

あまり熱心に学んではいないのだが、臨床心理学でいわれているようなカウンセリングの技法は、本書ですべて説かれているのではないか、という気がする。ビジネスの世界で、実践上の必要性に迫られて鍛えられた「原則」は、高尚な「学問」の遙か先を行っているのだろう。経営学が経済学の遙か先を進んでいるのと、似た関係である気がする。

 

私としても、いわばハウツーレベルで説かれた本書の内容を、学的に、科学的認識論から説ける実力を付けていかねばならないと痛感した。例えば、「重要感とは何か」「自尊心とは何か」ということから、「コミュニケーションとは何か」「特にノンバーバル・コミュニケーションはいかに認識を表現しているか」「それは相手にどのように伝わるか」等々、きちんと認識の本質と構造を踏まえて、過程として説けるように研鑽しなければならない。

 

そのためにも、何はともあれ実践である。全く新しい人間関係ができるこの時期だからこそ、実験にはもってこいである。いくらかはできていると思われる原則もあるので、「笑顔で接する」や「おだやかに話す」といった全く実践できていなかった原則を特に意識的に実行していきたい。

 

なお、本書にはオーディオ・ブック版もあり、英語版のほうは比較的安いので、英語の勉強をかねて買ってみようかとも思っている。

 
posted by 寄筆一元 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この本を取り上げていただいて、とても嬉しいです。
「臨床心理学でいわれているようなカウンセリングの技法は、本書ですべて説かれている」とか「ハウツーレベルで説かれた本書の内容を、学的に、科学的認識論から説ける実力を付けていかねばならない」とか、的確に捉えておられる。さすがですね。
おっしゃるとおり、カーネギーのこの本は「二重化」の具体を説いています。だから役に立ちます。
Posted by 流蛍 at 2008年03月30日 09:43
流蛍さん、コメントありがとうございます。

この本の内容をきちんと実践していきたいと思っています。
Posted by 寄筆一元 at 2008年03月31日 10:55
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