原田隆史氏の最新の著作。DVDによる講義+紙面による解説編という構成になっている。文句なく素晴らしい!!
まず、60分のDVD。原田式目標達成の極意と、それを可能にする「長期目標設定用紙」の書き方が、映像で、原田氏の肉声で、解説される。コンパクトに、簡潔にポイントが説かれており、原田メソッドの全体像が短時間で分かるようになっている。実は原田氏の講義・講演では、笑いをとるための冗談・ユーモアがたくさん登場するのだが、残念ながらこのDVDではカットされている。なお、原田氏自身もこのDVDを見て、「なかなかいいこと言っているな」などと感心しつつ、メモをとりながら熱心に聴いた(笑)ということである。
次に15回にわたる解説編。基本的には、長期目標設定用紙の実例とともに、各欄の意味と書き方が解説されている。以前の著作よりもかなり内容が整理されており、洗練化されてきているように感じた。毎回の解説の最後に、その回のポイントがレジュメふうにまとめられており、復習にも最適。
長期目標設定用紙自体も進化している。一目で各欄の意味が分かるように、背景にイメージが印刷されている。またルーティン目標欄は、優先順位を意識できるように、徐々に字が薄くなっている。こういった工夫を積み重ねられるところも、一流の人物である証左である。
ただ、「PDCA」ならぬ「P+C、DSS」の中身が、『成功の教科書』とは少し違っているのが気になった。たとえば、奉仕活動・清掃活動で心をきれいにする、というのは、『成功の教科書』では目次上はSHAREのところに入っているが、本書ではCHECKのところに分類されている。複数の意味があるということか? また、長期目標設定用紙には、「向上ルーティン」「切り捨てルーティン」、それに「目標のために欲しい支援者と具体的な支援内容」という三つの欄が削られているのも少し気になった。「初級コース」には不要ということか? 過去の著作を読み返して、自分なりに整理するとともに、今後の著作を待ちたいと思う。
本書を読んで痛感したのは、塾での僕の教育実践にはストロークがあまりにも不足している、という点である。ストロークとは「人と人とが関わり、相手の心に元気を与えること」(p.105)である。教える内容や技術も大切である。しかし、生徒一人一人のことに気を配って、生徒の小さな変化に気づいて声かけをする、ルールを守らない生徒にはルールの意味を教えてルールを守っている自分をイメージさせた上でしっかり実践させる、テストでいい点数をとったらしっかり誉める、等々のストロークの方もかなり重要である。思えば生徒から人気のある先生は確かにストロークが多かった。また、生徒の様子を反省してみても、ストロークを欲しているような感じがする。
原田メソッドは、抽象度の高い、厳密な意味での理論体系というのではなく、表象レベルの体系といえると思う。したがって使いやすい。これからも自分の実践に引きつけて、自分の実践を反省し改善している材料として、原田氏の著作に学んでいきたい。