そこで,まずは『西洋科学史』を否定して,もっと薄い科学史の本を読んで全体像をアバウトに描いた上で,さらにそこを否定して『西洋科学史』に戻るという計画を立てた。否定の否定の実践である。
そこで,以下の3冊をとりあえず読んでみた。
1冊目は,中山茂『パラダイムでたどる科学の歴史』(ベレ出版)である。単純に新しかったのと,「パラダイムでたどる」というのに惹かれたから買ってみた。クーン『科学革命の構造』の訳者でもある中山氏によると,パラダイムとは「一定の期間、科学上の問い方と答え方のお手本を与えるような古典的な業績」ということである。
認識論的にいうならば,パラダイムとは科学界の社会的認識ということであろう。あるいは,その社会的認識の「前提」といえるかもしれない。こういう観点から科学史を眺めると,膨大な事実もある程度整理できそうである。
唯物史観の批判もあり,なかなか興味深かった。
2冊目は,八杉龍一『図解 科学の歴史』(東京教学社)である。これはずっと以前から持っていた。120ページとコンパクトな上に,ページの上半分以上は図解が占めており,文章が少ない。目次は以下である。
序 章 歴史の概観
第1章 宇宙観の歴史
第2章 物質観の歴史
第3章 生命観の歴史
第4章 技術の歴史
第5章 日本の科学の歩み
これはレジュメ代わりに使えると感じた。ここに載っている科学者やその業績くらいは,しっかり流れてとしてイメージできるようにしなければならない。
ちなみに著者の八杉龍一は,『学城』第7号,第8号でも取り上げられているほどの有名人。生物学史研究の第一人者ということである。
最後は,磯直道『科学思想史入門』(東京教学社)である。東京教学社のHPでその存在を知った。アマゾンの紹介には以下のようにある。
「新しい目で科学思想の流れを眺めた、「科学概論」あるいは「科学思想史」の入門書。自然科学・社会科学・人文科学の三分野の相互理解と共同の必要性を踏まえて、人間の思考の歴史を眺めたものである。」
ここにあるように,自然科学だけでなく,社会科学・人文科学も,さらには哲学をもその射程に入れている。これを一人で書いて,さらに引用文献は,邦訳のあるものは全て読んだというからたいしたものである。
構成は通史であるが,それぞれの章のはじめに年表があり,各節の最後には簡単なまとめがついている。これが歴史の流れを理解する助けになる。また,節以下の見出しも秀逸で,これだけを抜粋してレジュメを作ろうかと思っている。
他にもたくさん購入したが,それは追々紹介することにしたい。とりあえずこの3冊くらいでレジュメを作って,科学史の大雑把な流れをしっかり描けるようにしたいと思う。
これは大学4年の2006年のときに、お書きになったものでしょうか?大変よく書かれていて感服しました。しかもそれ以前から弁証法の考え方を深く採用されていて、大学4年のぼくは、急激な焦りを覚えました。
差し障りなかったら、今何歳か教えていただきたいです。
あの文章を書いたのは,大学卒業後だと思います。現在は30代です。
弁証法を学ぼうとされているのであれば,ぜひ以下のブログを読んでみてください。我々の研究会のブログです。
主体性確立のための「弁証法・認識論」講義
http://dialectic.seesaa.net/
こちらはきちんとした論文形式で書いていますので,参考になるかと思います。