2006年05月20日

原田隆史『大人が変わる生活指導 仕事も人生もうまくいく』(日経BP社)



18日(木)に、原田隆史のテレビ出演が2本あった。一つ目は、ザ・ワイドのコメンテーターとしての出演である。草野仁が原田隆史にはあまり話を振らなかったような感じがした。二つ目は、ニューススクランブルでの教師塾の紹介だ。10分くらいの時間で、なかなかコンパクトによくまとまった紹介がされたと思う。教師塾への参加料が無料で、運営費はすべて原田隆史個人の貯蓄が当てられていることも、しっかり報道されていた。例によって、教師塾の紹介のVTRに、弟が映っていた。

そんな、メディア露出が増えてきた教育のエキスパート・原田隆史の新刊が『大人が変わる生活指導 仕事も人生もうまくいく』である。(念のためにいっておくと、この原田隆史と『声に出して読みたい日本語』の齋藤孝は別人である。)

大人向けに、原田式主体変容の理論とその具体的方法が説かれてある。この本を読んで、子どもや部下に「生き方モデル」を示せるリーダーが育てば、世の中がガラリと変わる、そんな予感がする素晴らしい内容だった。各章ごとに内容を紹介しよう。

「O時間目 仕事と思うな、人生と思え」では、自立型人間に生まれ変わらせるための指導、その中心にある「心づくり指導」がまとめられている。原田流、実践的認識論といった内容だ。以下の五つの方法で構成されている。

@心を使う
「『心を使う』とは、私が考案した『リーチング目標設定用紙』を使って、心の中にある思い、考えを文字にしていく作業です。自分の内面にある漠然としたイメージを鮮明にする作業ともいえます。また、思いを文字に映し出すことで、自分としっかり向き合うことができます。」(p.18)

A心をきれいにする
「『心がきれい』とは、心のコップが上に向いていて、物事に取り組む姿勢や態度が素直でまじめ、積極的な状態をさします。そんな時、人は高い目標にも真剣な態度で向き合えます。
 『心をきれいにする』とは、身の回りの目に見えるすさみと、心の中にある見えないすさみを取り除くことです。」(p.19)

その方法としての態度教育の徹底と奉仕活動。

B心を強くする
「『心を強くする』とは、今の自分の力でやれることを決めて毎日欠かさずに継続することです。前述のように心をきれいにするための清掃や奉仕活動であれば、なお効果的でしょう。」(p.20)

C心を整理する
「『心を整理する』とは、自分の心の中にある、過去の失敗や後悔などのマイナス要素を整理して、いつまでもそのマイナスにとらわれないようにすることです。」(p.21)

その具体的方法としての日誌。

D心を広くする
「自分の長所を生かして他人に貢献したり、持っているものを惜しみなく相手に与えると『ありがとう』の言葉が返ってきます。その際に『心が広くなる』のです。」(p.22)

日本精神の発揮。

「一時間目 大人にこそ生活指導を」では、ごく身近な日常生活の改善を通して、仕事や家庭がうまくいった実例が紹介されている。それら全てが、自らの「心づくり指導」の具体化として紹介されているために、「心づくり指導」そのものがよく分かるようになるし、その有効性も得心できる。最後の方では、理想のリーダー像が説かれている。

「ビジネスの現場に限らず、広い意味でリーダーにふさわしい人間をひと言でいうなら、私は生き方そのもの、人生そのものがお手本になる人だと確信しています。前述した通り、生き方モデルになれる人です。」(p.67)

「二時間目 理念と目標を掲げる」は、人生の理念について説かれている。吉田松陰を引き合いに出して、「高杉晋作、伊藤博文、山県有朋など明治維新の中心人物を、わずか二年半という短期間で輩出」するという業績は、「松陰先生の国を思いやる強烈な『思い、志、理念』があってこそ成し得た奇跡」である、としている。そして、「理念がないままに、真の目標を見つけることはできません。理念が定まってはじめて、目指すべき目標が、次々と見えてくるのです。」(p.75)と説き、「理念とは、目標に向かって日々上る階段を、しっかりと支える柱」(p.76)であるとまとめている。その後、理念を形成するのに役立つ日誌の効果についても説かれていく。なお、原田隆史自身の人生理念は、「日本をよりよくする自立型人間の育成」(p.108)である。

次の「三時間目 脳と心を鍛えるエクササイズ」では、「手書き、音読、アナログ」で行う脳に汗をかくエクササイズ法が紹介されている。具体的には、三分間作文とオープンウィンドウ64(別名マンダラワーク)である。こういったエクササイズで、自分の長所や仕事の楽しさをできるかぎりたくさん出し、情熱を語る多くのことばを蓄えておく、実践思考を鍛える、七秒間で相手の心にグサッと入り込む言葉を用意しておく、というわけである。最後には、自分を元気にする方法として、日誌、ストローク、セルフトークの他に、「感動するものに意図して触れること」を挙げている。ここで、元気が出るお薦めの映画やドラマ、アニメ(『オールド・ルーキー』『ナチュラル』『ブレイブハート』『パトリオット』『Mr.インクレディブル』『白い巨塔』『Dr.コトー診療所』『アルプスの少女ハイジ』)を紹介した後、次のように述べている。

「映画やドラマのシーン以外にも、元気が出た言葉、感動した思い出、先輩や上司から聞いたよい話などを、忘れないように書いておく。こうした元気のキーワードをたくさん持つことは、他の人にも元気を与える言葉をたくさん持つことになります。」(pp.127-138)

最終章は「四時間目 かかわり方を変えてみる」である。ここでは、「やる気を与えるポイント」として、「有能感、統制感、受容感」(p.156)という三つの内発的動機づけが紹介されていたり、リーダーの三つの顔ということで、「『母性』『父性』『子ども性』の三つの性をバランスよく使い分けて育てること」(p.158)の大事性が説かれていたりする。これらは自分の塾での指導にも生かせそうな気がした。こういった原田隆史が取り入れている心理学的知見は、最近購入したAtkinson and Hilgard's Introduction to Psychologyのような教科書で確認していこうと思った。成功曲線と心のツボの話も、実践に活用できそうだ。ストロークの重要性と注意点も再確認できた。

p.170から始まる「よき大人よ、夢を掲げ、同志をつくれ!」の節は、非常に感動的だった。少し長いが引用して、この本の紹介を終わりたい。やはり、どんな分野であろうと、革命的な仕事をされる方というのは、同じような孤独感を味わうのだという気がした。

「私は、問題のあった学校を立て直すとき、自分を裏切らない仲間、志をともにしてくれる同志がほしいと、切に願いました。しかし実際は、崖っぷち四面楚歌の状態が続いていました。
 というのも、志をともにしない人間に、ちょっとでも依頼心を見せれば、結局そこから、すべてをひっくり返されてしまうという経験が何度もあったからです。だから、何があっても自分を裏切らない仲間がほしかった。
 中学校を立て直すことはできましたが、そこで直面した問題は、日本の教育の問題でもありました。
 志を育み、自立心を芽生えさせることに、目を向けない日本の教育。スキルがすべてのように指導する風潮。忌まわしい事件の加害者がどんどん低年齢化していく異常な世の中。志のない人材が就職して、企業の体力もどんどん落ちていく。私の力だけでは、もはやどうにもならない。
 そこで、ある夢を抱きました。将来、教師を指導する先生のための私塾をつくりたいと。私に共感してくれる日本全国の先生方に、自分の志を伝えて育てていきたい。そして、志ある教師が責任を持って生徒を育てていくしかないと考えたのです。これが現在、力を注いでいる教師塾です。日本の教育や企業をプラスに導くためには、たくさんの同志を増やさなければなりません。
 たとえ四面楚歌でも、それを楽しんでください。悪いムードに決して流されることなく自分を貫いてほしい。かつての私がそうであったように。
 必ず自分の志に、心から共鳴してくれる人が出てきます。かかわりを絶やさず、その志の輪を一つひとつ広げていきましょう。いつか、あなたの時代がくるはずです。」(pp.171-172)
posted by 寄筆一元 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Tracked: 2006-06-06 01:24