2006年09月23日

シュテーリヒ『世界の思想史』上・下巻(白水社)





シュテーリヒ『世界の思想史』を読了。数多い哲学史の入門書から本書を選んだのは、もちろん『西洋科学史』の著者シュテーリヒが書いた哲学史の本だから、というより『西洋科学史』の姉妹本だから、である。科学の歴史に関しては絶賛に価する内容を書けるのに、哲学の歴史に関しては全くダメ、なんてことはないだろうと判断して、選んだわけである。

2段組、上下巻で600ページを超える分量(『西洋科学史』全五巻の60%くらいの分量)だが、哲学史のおおよその流れはイメージできたように思う。

他の哲学史の本、例えば、波多野精一『西洋哲学史要』(玉川大学出版部)、田中美知太郎編『哲学の歴史』(人文書院)、シュベーグラー『西洋哲学史』(岩波文庫)、デュラント『哲学物語』(平凡社)などと比較して、『世界の思想史』の長所と短所を挙げておこう。

長所
・東洋の哲学から現代哲学までを網羅している
・しかも、一人の著者が書いている
・哲学者の肖像・写真が載っている
・索引付きである
・同じ著者であるため『西洋科学史』の記述と調和的である
・ヘラクレイトスの調和的矛盾にも触れている

短所
・やや分量が多いか?
・その割にドイツ観念論の扱いがやや小さい
・引用の出典が訳されていない(原著にはある)
・訳者間で訳語の統一がなされていない

まあ、短所の下2つは訳書の問題であって、シュテーリヒには何の責任もない。

それにしてもこのシュテーリヒ、『西洋科学史』と『世界の思想史』を独力でまとめ上げる実力は、凄まじいの一言である。『世界の思想史』だけに限っても、長所の初めに挙げたように、古代インド哲学などの東洋思想から、生の哲学、現象学、実存主義といった20世紀の思想までを、射程に入れているのである。しかも、ヘラクレイトスの調和する矛盾をしっかり取り上げている(シュベーグラーは取り上げていない)ことから判断しても、内容は信頼できそうである。

なお、本書には旧版と新装版の二種類が存在する。上の白い方が新装版、下のソクラテスとサルトルのアップが旧版(の函)である。

shisoushi1.JPG

shisoushi2.JPG

最後に、参考までに3種類の目次を載せておく。詳細版を見れば、本書の壮大なスケールが分かると思う。

『世界の思想史』目次(簡略版).txt
『世界の思想史』目次(中間版).txt
『世界の思想史』目次(詳細版).txt
posted by 寄筆一元 at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月08日

真空なんて存在するのか?

今日、近所の図書館に行って、雑誌『ニュートン』2005年8月号の「真空」に関する記事を読んだ。現在では、「真空」の中で素粒子が生成したり消滅したりする現象が確認されているという。

全くの当てずっぽうで、適当な思いつきに過ぎないのだが、本当の真空、つまり何も存在しない空間なんて、存在しないのではないか? 空間、真空、エーテル、ダークマター(暗黒物質)、これらはすべて同じもので、いわば物質の原基形態とでもいえるようなものなのではないか? つまり、一般常識的には何も存在しないとされている空間=「真空」自体が一つの物質であるのではないか? そして、この空間=「真空」が量質転化して素粒子や原子(あるいは目に見える物質)になるのではないか?

そんなことがふと頭をよぎった。
posted by 寄筆一元 at 23:00| Comment(26) | TrackBack(0) | エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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