シュテーリヒ『世界の思想史』を読了。数多い哲学史の入門書から本書を選んだのは、もちろん『西洋科学史』の著者シュテーリヒが書いた哲学史の本だから、というより『西洋科学史』の姉妹本だから、である。科学の歴史に関しては絶賛に価する内容を書けるのに、哲学の歴史に関しては全くダメ、なんてことはないだろうと判断して、選んだわけである。
2段組、上下巻で600ページを超える分量(『西洋科学史』全五巻の60%くらいの分量)だが、哲学史のおおよその流れはイメージできたように思う。
他の哲学史の本、例えば、波多野精一『西洋哲学史要』(玉川大学出版部)、田中美知太郎編『哲学の歴史』(人文書院)、シュベーグラー『西洋哲学史』(岩波文庫)、デュラント『哲学物語』(平凡社)などと比較して、『世界の思想史』の長所と短所を挙げておこう。
長所
・東洋の哲学から現代哲学までを網羅している
・しかも、一人の著者が書いている
・哲学者の肖像・写真が載っている
・索引付きである
・同じ著者であるため『西洋科学史』の記述と調和的である
・ヘラクレイトスの調和的矛盾にも触れている
短所
・やや分量が多いか?
・その割にドイツ観念論の扱いがやや小さい
・引用の出典が訳されていない(原著にはある)
・訳者間で訳語の統一がなされていない
まあ、短所の下2つは訳書の問題であって、シュテーリヒには何の責任もない。
それにしてもこのシュテーリヒ、『西洋科学史』と『世界の思想史』を独力でまとめ上げる実力は、凄まじいの一言である。『世界の思想史』だけに限っても、長所の初めに挙げたように、古代インド哲学などの東洋思想から、生の哲学、現象学、実存主義といった20世紀の思想までを、射程に入れているのである。しかも、ヘラクレイトスの調和する矛盾をしっかり取り上げている(シュベーグラーは取り上げていない)ことから判断しても、内容は信頼できそうである。
なお、本書には旧版と新装版の二種類が存在する。上の白い方が新装版、下のソクラテスとサルトルのアップが旧版(の函)である。
最後に、参考までに3種類の目次を載せておく。詳細版を見れば、本書の壮大なスケールが分かると思う。
『世界の思想史』目次(簡略版).txt
『世界の思想史』目次(中間版).txt
『世界の思想史』目次(詳細版).txt