2005年11月20日

『綜合看護』2005年4号(現代社)

今回は新刊情報がいくつか載っていた。まず、これは『学城第二号』でも案内されていたが、『南郷継正 武道哲学 著作・講義全集 第六巻』である。これは雑誌の最後の「近刊案内」に書かれてあった。しかし「頁数未定」とのこと。ということはまだ製本されていないのか? しかし「第1版 2005年」とあるから、年内には出るのだろう。内容は「『全集』読者への挨拶〔W〕」、「〔全集版〕武道への道」、それに「武道哲学講義〔V〕」である。「武道哲学講義〔V〕」は、「日本弁証法論理学研究会2003年冬期ゼミ合宿『講義録』」で、「第一部 『精神現象学 序論』を読めるためには」である。最近の講義であり、非常に楽しみだ。(そういえば、『全集』にはかなり新しめの講義が採用されているようだが、古い講義録を出す計画は頓挫してしまったのだろうか?)

二つ目は、今回の南郷師範の連載論文で予告された、『なんごう つぐまさが説く 看護学科・心理学科学生への“夢”講義――看護と武道の認識論――』第1巻である。つまり、『綜合看護』での連載論文を単行本として出版するということである。第1巻とあるのは、今までの連載を単行本化するとなると、最低でも3巻以上になるから、とのことである。僕の弟はつい最近、この師範の連載論文が読みたくて、わざわざ『綜合看護』を7年分くらい購入したのだが、もう少し待っていれば単行本で読むことができたわけだ。もっとも、下手をすればあと2、3年は待つ必要があるかもしれないし、師範の連載論文以外にも読むべき論文が多数載っているので、購入した意義はあると思う。なお、内容・順序は連載そのまま(説明不足の箇所は補足されるが)で、タイトルが一字だけ訂正してあるとのことである。どこが訂正されたかお気付きだろうか?

最後は、『看護学生・医学生のためのいのちの歴史の物語』(仮題、現代社)である。これは瀬江先生の「脳の話」で触れられていた。これも『綜合看護』に連載されていた論文の単行本化である。連載終了時に単行本になることが予告されてから2、3年たつが、もうそろそろ出していただけるのだろうか。「近く刊行される予定」とある。内容はもちろん、「地球上に誕生した生命現象が実体化して単細胞となり、ついには人間にまで発展するに至った、生命体の生成発展の歴史を論理的に措定した『生命の歴史』」(p.27)を物語風にやさしく説いたものである。もちろん連載論文は何度も読んだが、単行本の場合は、『統計学という名の魔法の杖』の例からも分かるように、大幅な再構成・加筆が行われる可能性がある(それ故に、なかなか出版されないのかも)ので、非常に楽しみである。

さて、今回読んだ論文に対して、簡単なコメントを記しておきたい。


神庭純子「初学者のための『看護覚書』・7」

「人間は育てられて人間になる」という人間の一般性を、もっと構造に立ち入って深く理解すれば、「人間は育てられることによって、育てられたように育つ、いいかえれば、育てられてこなかったことは育てられてこなかったように育っている」ということになる。これを高齢者の発達段階におきかえてみると、もともともっていた身体の各機能が、「使われていれば使われているように使い続けることができる、しかし逆に、使われていなければ、使われなかったように衰えていく」ということである。したがって、「使われないことによって使えなくなっている機能がある、それが障害として現象していることを見抜くこと、現象している障害(症状)のなかには病気や障害そのものではなく、看護されないことによって日々の生活のなかで家族や本人、医師や看護師の手によってつくられてしまった障害(症状)というものがある」ということを見抜くことが大切である。


瀬江千史「脳の話・19」

「生命の歴史」のサルの前後の過程的段階において、「問いかけ的認識」の芽生えが如何にして生じだしたのかが説かれている。ここには「木に登るための四肢の運動形態」が大きく関わっているようだ。それにしても、相変わらず瀬江先生の論文は読みやすい。読んでいて気持ちがいい。


瀬江千史・本田克也他「次代を担う看護学生・医学生への医学概論教育講座・11」

今回で第一部「医師とは何か」が終了。次回から始まる第二部は、第一部をきちんと踏まえていなければ実力化できないので、今回は第一部の復習に充てられている。いつものように最後に載っている医学生の文章が興味深い。これは、『看護学と医学』に説かれている論理のおかげで、この医学生の気付き力がアップしているというか、事実を事実として見ることができるようになっているというか、そんな例だと僕には思えた。そして、また、論理の学び方の例だとも思った。


南郷継正「なんごうつぐまさが説く看護学科・心理学科学生への“夢”講義・28」

はじめに、先ほど紹介した『なんごう つぐまさが説く 看護学科・心理学科学生への“夢”講義――看護と武道の認識論――』第1巻の目次が載っている。目次を見るだけでもワクワクしてくる。その後は、今回も弁証法の講義。弁証法の駆使を自動車の運転に喩えて説かれているのが、非常に分かりやすい。カントとヘーゲルと三浦つとむの弁証法の実力の違いが、この喩えを使って説かれているのも興味深い。ワクワクしながら読み進めていく。師範の論文はどれもそうだが、おもしろくて仕方がない。読んでいる最中に、自然と笑みがこぼれてくる。ニヤニヤしているといった方が正確かもしれない。図書館や電車など、他人がいる場所で読んでいたら、きっと変な人だと思われるにちがいない。
posted by 寄筆一元 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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