小渕内閣の「経済戦略会議」議長代理も務めた中谷巌による経済(学)の解説書。ミクロ経済学とマクロ経済学の基本が、高校の「政治・経済」の参考書より詳しく、分かりやすく解説されている。内容はかなり重複しているが、大雑把に分けると、『痛快!経済学』の方が基礎理論、『2』の方がその基礎理論の現実への適用・応用となっている。時事問題の理解に必須の経済知識を求める社会人や、一般教養として経済学を学びたい大学生、経済学部への入学を希望している高校生などには最適の入門書であるといえる。
『2』の帯には、本書で取り上げられている「生き残りへのキーワード」として次のものが挙げられている。これらを知らない人は速攻で購入して読むべきだろう。
情報の非対称性、中国経済、IT革命の真意、ワンツーワン・マーケティング、カスタマイゼーション、労働市場のモジュール化、水平分業、ロジスティック革命、アカウンタビリティ、ガバナビリティ、厚生経済学の命題、拡大EU、暗黙知、プロフェッショナリズム、アウトソーシング、FTA、貯蓄率の劇的低下
『2』のみで扱われている大きなテーマとしては、「情報の非対称性」「IT革命」「FTA」「貯蓄率の低下」などが挙げられる。この中で、「情報の非対称性」とは、「需要側と供給側の情報の質や量の差」のことである。これがあるために、しばしば市場は失敗する。しかし、IT革命によって情報の非対称性が急速に解消されつつあり、アマゾンやデルに見られるように、ITを活用した「顧客データ」の蓄積と分析、そしてその情報を利用した「ワンツーワン・マーケティング」によって、急成長する企業も誕生している。このような議論がなされている。
どちらか一冊だけ買うとしたら、『2』ではなく元祖『痛快!経済学』の方がいいような気がする。文庫ということもあって、コストパフォーマンスにすぐれている。『2』の方は、282ページ中、約36ページほど意味不明な写真や絵が占めており、これだけはどうにかならなかったものかと思えてくる。ちょっと詐欺に近いものを感じる。また、元祖の方が基礎理論を詳しく説いているので、経済「学」を学びたい人にはこちらの方がよかろう。
最後に、『2』の方をマインド・マップにまとめたので、それを載せておこう。