読書会には三浦つとむ主義者=南郷信者(直接的同一性、とか言ってみる)である僕のほかに、同じく三浦つとむ主義者で南郷信者のS君、某一流(?)大学院D2のK(といっても、もちろん夏目漱石『こころ』で死んでしまうKではない)ちゃん、それにO(僕の弟。「おとうと」の「お」からO)が参加した。S君は参考資料として、トロツキー『ロシア革命史』(岩波文庫)から「二重権力」の章をコピーしてきた。マルクス主義者による、数少ない二重権力の検討だという。
初めにKちゃんが「二重権力論」の内容をレジュメにそって報告。次に疑問点や論点を出し合って、初参加のOのために、Kraft、Macht、Gewaltや国家意志、<第三の権力>などの基本用語を確認した。念のために、『増補マルクス主義国家論』からKraft、Macht、Gewaltの説明を引用しておこう。
Kraft:
「物理的に作用する諸力」(p.26)
Macht:
「自然・社会・思惟にわたって、人間に能動的に働きかける力をその過程的構造において把えたもの」(p.97)
「諸個人が<生活の生産>において直接・間接にとり結んだ関係を基礎にしてつくりだされた・規範としての<共通意志>による支配=服従関係を本質とした・<支配力>」(pp.27-28、社会におけるMachtの規定)
Gewalt:
「人間が創り出した社会的諸力であれ、雷などの自然諸力であれ、人間に対して暴力あるいは強力として作用する状態におかれたすべての諸力」(p.26)
なお、三浦つとむはKraftを「力そのもの(物質的または観念的な)」、Gewaltを「人民に対して行使される暴力」、Machtを「管理力」(「マルクス・レーニン主義に関する本質的な質問」、1967年頃提出、『胸中にあり火の柱』pp.322-323)と規定している。
その後、国家意志における理念的・形式的部分と具体的・実質的部分の区別と連関、さらにこの両者は<統治>と<行政>に対応するのかどうか、また<政治Macht>の階級的性格と<経済的>出自のズレなどについて、いろいろと議論をした。なお、<統治>と<行政>概念に関しては、一般向けに書かれた『ニッポン政治の解体学』p.110に簡潔に説いてある。全ての論点を扱う前に時間切れ、続きは居酒屋で行うことになった(もちろん、居酒屋で続きなどは行っていない)。
僕が弁証法の参考文献としてこの論文から学ぶべきだと思うことは、矛盾は具体的に正確に把握・分析しなければならないこと、さらに対象を思い通りに変化させるためには対象の持つ法則性をしっかりと認識しなければならないこと、の二点である。ここまで言ってしまうと一般的すぎるかもしれないが。。。
ともかく、題材がなんであれ、同じく弁証法・認識論を学ぶ仲間とは、こうして定期的に会ってお話しするのが刺激にもなって、たいへんいいことだと思った。