この『三銃士』でいえば、近衛銃士隊の活躍、決闘の存在、王宮での王と王妃の生活、監獄の様子、当時の生活習慣などが生き生きと描かれており、単に教科書を読んだだけでは決して得られない鮮明なイメージが得られる(もちろん、全てが史実通りに描かれているわけではないだろうが)。
正義感にあふれ、国王に忠誠を尽くすダルタニヤンの他に、アトス、アラミス、ポルトスの三銃士もそれぞれ個性的で、いい味を出している。小説ではもっと細かなエピソードなどが書かれいているのだろうから、また読んでみたいと思う。
なお原作は、ダルタニヤンを主人公とする歴史小説三部作の一つ目。二つ目が『20年後』、三つ目が『ブラジュロンヌ子爵』(これは『弁証法はどういう科学か』に引用されている)である。ダルタニヤンは実在の人物で、フランス国王ルイ14世に仕え、マザラン宰相に信頼された優秀な武人。有名なフロンドの乱にも活躍した。デュマはクルティス・ド・サンドラの『国王の銃士隊副隊長ダルタニャン氏の回想録』を元にして小説を書き上げた。