2005年05月30日

『学習漫画 世界の歴史』全20巻+別巻2(集英社)



世界史が学べるマンガ。こういったマンガで歴史を学ぶ一番の利点は、イメージが描けることである。高校で学ぶ世界史は、極端にいうと、単語を暗記するだけで、具体的な状況が全然像として描けない。ところが、マンガであれば、歴史的な事件が生き生きとした映像として思い浮かべることができるのである。

全巻、別の監修者と漫画家によって作られているが、シリーズとしての統一性もある。それぞれの章の始めには、ミネルヴァのフクロウらしき鳥が時代背景などを説明する。そして実在しない人物や家族などを主人公にして、それぞれの時代の特徴や歴史的事件などを具体的に描いている。

マンガであるから、当然情報量が不足する。これを補うために、コラムや欄外の注釈、巻末の「世界史おもしろ資料館」なども充実しており、必要に応じて細かく歴史を知ることができる。また、一番最後のページには、巻ごとに「自動車の歴史」「貨幣の歴史」「映画の歴史」などがイラスト付きで簡潔にまとめられている。

全体として非常に出来のよい作品だと思う。高校生などが、授業の進度に併せて、このマンガで予習しておくと、非常に効果的だと思われる。

次は『日本の歴史』の方を読んでみたい。これも非常に楽しみだ。
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2005年05月29日

入手困難な本

僕のもっている入手困難な本を紹介しよう。

1.滝村隆一『唯物史観と国家理論』(三一書房)

滝村隆一氏の昔の著作は手に入りにくいものがいくつかあるが、これは極めつけ。『国家論大綱』が出るまでは、滝村国家論の中心的著作として位置付けられていたように思う。因みに、おそらく日本で一番多く滝村氏の著作を所持しているのは僕だと思う。


2.シュテーリヒ『西洋科学史T〜X』(現代教養文庫)
  シュテーリヒ『西洋科学史 上・中・下巻』(商工出版社)

医学者・瀬江千史氏が、「科学史を知るうえで必読の書」(『医学の復権』p.137)、「大学の『一般教養』としての科学の歴史を――自然科学も社会科学も含めて――概観するには、シュテーリヒの『西洋科学史T〜X』(菅井準一他訳、現代教養文庫)に優る書はありません」(『看護学と医学(下巻)』p.222)と絶賛する本。しかし、「必読」であるにもかかわらず本当に入手困難。学生時代、出版元の社会思想社に電話して、再版の予定はないのかと聞いたが、ないという返事だった。それからしばらくして、社会思想社自体がつぶれてしまって、同じく現代教養文庫の河合栄治郎『学生に与う』すらが、入手困難になってしまった(もっとも、こちらは万能書店でオンデマンド版、eBookJapanで電子版が購入できるが)。商工出版社版は、現代教養文庫版の元になったもの。これは京大近くの古本屋で、25000円くらいで売っていた。あまりにも高くて購入しなかったが、ネット上の古本屋で、もう少し安値で発見。即購入した。こんなことを言うと反感を買いそうだが、おそらく日本で一番多く『西洋科学史』を所持しているのも僕だと思う。


3.アイザック・アシモフ『化学の歴史』(河出書房新社)

今回紹介する本の中で、一番最近に発見・購入した本。まだ読んでいない。高校レベルの化学を復習したらすぐ読むつもりである。訳者のあとがきに本書の目的が書かれている。

「高等学校や大学の初年級では、化学の授業において、すでにでき上がった概念や知識について学ばねばならぬことが多い。しかし、科学教育の一般的目標としては、むしろそのような概念や知識が形成されるにいたった過程を理解することが望まれるのであるから、この点については、教師も学生も充分に注意し、努力しなければならない。その一つの手段としては、学生が教科書やノートで学習することと併行して、適当な副読本を読むということが奨励される。本書は、アメリカにおいて、まさにそのような目的にそうための一連の科学書の一つとして選ばれたものであった。」


4.中岡孝『社会科学読本 自然・人間・社会』(牧書房)

南郷継正氏が『武道講義第四巻 武道と弁証法の理論』(三一書房)の中で、三浦つとむ『弁証法はどういう科学か』(講談社現代新書)と併せて弁証法の教科書であるとして推薦されている本。『武道と弁証法の理論』の中で南郷氏の弟子である近藤成美氏は、『自然・人間・社会』の意義を次のように説いている。すなわち、『弁証法はどういう科学か』には、「世界の一般的な変化・発展・運動の有様」という「肝心の部分がそっくり省略されてしまっている」ので、「我々としてはやむを得ず『自然・人間・社会』で学ばねばならない」、本書を読めば「弁証法とは単なる発想法や方法論ではなく、世界観レベルで把持すべきものである」ということが感じられるから、この二著の併読が必須である、と。しかし、これまた「必須」であるにもかかわらず、非常に手に入りにくい。出版年が昭和22年なので、入手しても紙がボロボロ。よほど慎重に読まなければならない。それでもスケールの大きさには感動する。社会科学読本といいながら、社会を説くにして宇宙から説き起こしているのであるから。


5.ポレヴォーイ『真実の人間の物語 上・下』(青銅選書)

主人公たるアレクセイ・メレーセェフは、「実在の人物であり、第二次世界大戦中、空中戦で墜落して両足を切断した後に、必死の努力で義足を訓練し、再び戦闘機を駆って独機を撃墜した本物の勇者」(南郷継正『武道修行の道』三一新書、p.13)である。そんな勇者の見事な生き様を描いた物語。昔、共産党の学習文献であったらしいが、その割にはあまり見かけない。


6.三浦つとむ『弁証法をどう応用するか』(青春新書)
7.三浦つとむ『共産党 この事実をどう見るか』(青春新書)

三浦つとむ氏の青春出版の著作は、なかなか手に入らない。僕はこの二冊しかもっていない。『マルクス主義の基礎』や『こう考えるのが正しい』は、『三浦つとむ選集』に入っているのでいいとしても、『社会とはどういうものか』は『選集』に入っていないだけに、非常に欲しい著作だ。どなたか譲ってください。


8.ディーツゲン『人間の頭脳活動の本質』(未来社)

三浦つとむの師たるディーツゲンの代表的著作。同じ著作の岩波文庫版は、1990年代に重版されたこともあり、そこそこ手にはいる。ディーツゲンの著作は他に改造文庫からも出ている。『弁証法的唯物観』『哲学の実果』『マルキシズム認識論』の三つである。改造文庫は著作権が切れないようにするためか、昭和52年に復刻版が出ており、ディーツゲンの著作も独特の布製装幀でわりと簡単に入手できる(ディーツゲンの著作が入手できずに困っているディーツゲンファンにアドバイスしておきたいことがある。それは、改造文庫版では著者名が「デイツゲン」となっているため、「デイツゲン」あるいは「ディツゲン」で検索しないと引っかからない場合もあるということだ)。というわけで、ディーツゲンの著作でもっとも入手しにくいのは、未来社版の『人間の頭脳活動の本質』なのである。なお、僕はディーツゲンのおそらく全ての著作のドイツ語原文を持っている。


9.南郷継正『南郷継正 武道哲学著作・講義全集(2)』(現代社)

2003年末に出版されて、すぐさま品切れになってしまった。2500部限定なので、かなり入手困難なはず。ただ、長期的には様々な形で出版されるのではないだろうか、などと予想している。元となった『弁証法・認識論への道』は、僕の人生を大きく変えた著作。この著作に出会っていなければ、僕の人生はつまらないものになっていたに違いない。
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2005年05月24日

書評:原田隆史『成功の教科書』(小学館)

原田隆史公式HPに『成功の教科書』の書評が掲載されている。以前書いたものを少し手直ししているので、ここに改めて掲載する。


だれもが目標を設定し達成できる入門書

 近頃、学校卒業後に就職も進学もしていないニートと呼ばれる若者が急増している。確かに、背景には社会的要因がある。労働需要の不足による求人の減少、労働力需給のミスマッチの拡大などである。しかし、若者の側にも問題はある。それは、将来の目標が立てられない、あるいは、目標を実現するための実行力が不足しているという、若者の個人的な問題だ。
 そのような若者にぜひとも読んでほしい本が登場した。それが元中学校教師の原田隆史氏が書いた『成功の教科書』である。原田氏によると、成功とは「自分にとって価値あるものを未来に向かって目標として設定し、決められた期限までに達成すること」である。したがって、成功するための方法が書かれている本書は、目標が見出せない、あるいは目標を達成する方法が分からない若者にとっては、まさに福音の書といえるのである。

 『成功の教科書』で展開されている原田メソッドの一番の特徴は、書いて書いて書きまくるという点である。目標を設定する際に、とにかくたくさんのことを書くのである。本書でも、「書いてみよう」というコーナーが24も用意されており、原田メソッドを理解しながら、実際に2週間先の目標が設定できる仕組みになっている。
 なぜこれほどまでに書くことにこだわるのか。それは、書くことによってイメージが強化されるからである。人間は、イメージしたことでなければ実現できない。イメージより上には行けないのである。逆にいうと、鮮明にイメージできることは必ず実現できる。これは原田氏の20年間の指導の結論である。ここから、イメージを高めるための方法として、自分の考えを対象化するということ、すなわち書くということが重視されてきたのである。書いて書いて書きまくることによってイメージを極限まで高めた結果が、「予告優勝」である。原田氏が育てた中学生の中には、「中学最後の大会で中学日本新記録を出して優勝するからマスコミを呼んでくれ」と優勝を予告しておいて、事実その通りに日本新で優勝した生徒がいるという。まさに思い通りの優勝、イメージ通りの優勝である。
 もちろん、書くといってもただやみくもに書けばいいというわけではない。付録の「長期目標設定用紙」に書くのである。これこそ目標設定のための「究極のツール」である。3段階に分けた「成績目標」、毎日継続して行う「ルーティン目標」やいつまでにやると決めて行う「期日目標」、それに「心・技・体・生活・その他」のそれぞれに分けて行う「成功のための自己分析」、目標を腐らせないための「成功へのセルフトーク」等々、原田メソッドのエッセンスが詰まっている。この「長期目標設定用紙」のたくさんの項目を全て肉筆で書いて、さらに1週間に最低1回は内容の更新を行うのである。こうすることによって、成功へのプロセスが鮮明にイメージできるようになるのである。

 心=イメージを重視する原田氏は、『成功の教科書』において、イメージが湧きやすい表現を駆使している。抽象的で、何を言っているのか分からない、という部分は全くない。成功のためのポイントが、映像として鮮明に描けるのである。だから、記憶にも残るし、「やってみよう!」という気になるのである。
 たとえば、イラストが非常に効果的に使われている。小さな成功の積み重ねの先にしか、大きな成功はあり得ないということ(スモールステップの原則)を説明する際に、小さな階段を順調に登っている人間と、自分の背丈ほどもある階段を登ろうとして失敗している人間をイラストで描いている。これを見れば、スモールステップの原則が鮮明に記憶に残る。こういったイラストがたくさん使われている。
 また、言葉の使い方も工夫されている。たとえば、「危機管理」のことを、「未来に起こりうる問題を予測し、解決策のミサイルを発射!!事前に障害を取り除いておく」と表現している。別のところでは、「優先順位の高い行動から実践していくこと」を「おかず理論」と呼んでいる。これは、次のようなエピソードからできた言葉である。生徒がお弁当を食べるとき、大好きなおかずを最後にとっておいたので、いたずらで原田氏がそのおかずを横取りして食べたのだという。そうして、好物(重要事項)を後にとっておいてはいけない、時間が足りなくなったときの被害を最小限におさえるために、好物から食べる(優先順位の高いことからまず手をつける)べきだと諭すということである。ことわざのように、表の具体的な事実から、裏の一般的な法則を伝えるユニークな表現である。こういった表現が至るところで使用されているために、本書は非常にイメージの湧きやすい、分かりやすい内容になっている。

 このようなイメージの湧きやすい言葉を駆使する実力は、原田氏の20年間にわたる教育実践によって磨かれてきたのであろう。おそらく、抽象的な言葉など理解できない中学生を相手に、何とか自分の思いを伝えようと指導してきた結果、原田氏オリジナルの言葉が生まれてきたのだと思う。
 成功はだれにでも身につけられる「技術」であると捉える見方も、自らの指導の中から浮上してきたのだろう。スポーツ推薦のない公立中学校で、7年間に13回の陸上日本一を達成したのである。原田メソッドを創り、徐々に発展させつつ検証していく中で、「成功はだれにでも可能だ!」「成功の技術はだれにでも身につけられる!」という確信に至った違いない。
 原田メソッドは、原田氏自身の教育実践が下敷きになっている。だからこそ、『成功の教科書』を読んでいると、原田氏の教育者魂が伝わってくるのである。成功のプロ=自立型人間を育てたいという原田氏の教育理念が、自然とにじみ出ているのである。

 『成功の教科書』は原田氏の教育実践の中でくり返しくり返し実証された内容であるだけに信頼できる。読めば成功へのプロセスが鮮明にイメージできる、非常にやる気の出る本である。方法も単純明快、「長期目標設定用紙」を書きまくる、これだけである。ここに全てのエッセンスが凝縮しているのである。
 スマートに読了しただけではダメである。本書を手にしたら、とりあえず「長期目標設定用紙」を100枚コピーしよう。覚悟を決めるのだ。1週間に1枚なら、たかだか2年分だ。初めのうちは何度も何度も書き直すことになるから、1年以内になくなるはずだ。100枚書ききったとき、成功のプロ=自立型人間への第一歩を踏み出したといえるだろう。
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2005年05月21日

『綜合看護』2005年2号(現代社)

この雑誌は、武道哲学・武道科学創始者の南郷継正氏が主宰する日本弁証法論理学研究会関係の先生方が論文を連載されている。もちろん、『綜合看護』というタイトルからも分かるように、論文のテーマは看護学やその周辺分野に限られている(より広いテーマについては、去年現代社から発刊された学術雑誌『学城 ZA-KHEM,sp』で説かれている)。

読んだ論文は以下。

瀬江千史「脳の話(17)」
瀬江千史・本田克也他「医学概論教育 講座(9)」
神庭純子「初学者のための『看護覚え書』(5)」
南郷継正「なんごうつぐまさが説く看護学科・心理学科学生への“夢”講義(26)」

いずれも非常に高度な内容が説かれているが、読んでいると心地よい。僕の感性にぴったりくるのである。と同時に、自分の怠け心を反省させられ、「これではイカン!」という気持ちになってくる。

以前この雑誌に連載されていた「看護のための『いのちの歴史の物語』」という論文を、重要なところを抜き書きしながら読み返したところ、少し理解が進んだ。同じように、現在連載されている諸論文も初めから読み返してみようと思う。
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福川祐司『吉田松陰』(講談社火の鳥伝記文庫)



子ども向けにやさしく書かれた吉田松陰の伝記。イラストや人物の写真、肖像画が豊富。

松陰の教育というと、松下村塾での弟子の指導をすぐ想起してしまうが、松陰自身がどのように教育されたのかも問題にしなければならない。松陰は幼い頃から畑で、叔父によって教育された。ここで武士としての規範をたたき込まれる。その後、佐久間象山など当時一流の学者から次々と指導を受けつつ、自己の信念を築いていく。また、読書量も半端ではない。二ヶ月ちょっとの間に、100冊を超える書物を読んだこともあるという。獄中にあっても読書を欠かさなかった。

それにしても松陰の感化力は凄い。獄中で囚人たちに孟子の講義をするやいなや、囚人たちの心を揺り動かし、手のつけられなかった囚人たちを変えていく。そして極めつけはやはり、松下村塾での教育だ。後に禁門の変で死亡する久坂玄瑞、騎兵隊を創って幕府軍に対抗した高杉晋作をはじめ、維新後まで生き残って総理大臣になった伊藤博文や山県有朋など、時代を動かす人材を数多く輩出することになった。しかも、松下村塾で松陰が教えていた期間は、わずか一年と一ヶ月というから驚くほかない。これだけの短期間に、若者の魂に火をつけることができたのだ。

実は僕が吉田松陰に興味を持ち始めたのは、小室直樹氏と原田隆史氏がそれぞれ絶賛しているからである。最近読んだ『修身教授録』の森信三氏も、当然高く評価していた。学校で習う吉田松陰といえば、井伊直弼によって安政の大獄で処刑された人というくらいではないだろうか。学校の社会科レベルでも、もっと注目されるべき人物だと思う。

また、講談社火の鳥伝記文庫というシリーズは今まで知らなかったが、なかなか良さそうだ。中学や高校の時に、こういった伝記で過去の偉人の人生に触れることは非常に重要であるという気がする。
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2005年05月20日

ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店)



「時間どろぼうと ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」

「小学5,6年以上」対象の児童文学であるが、単純に面白い。わりと難しい語彙も使用しているものの、小学生でも読めるように、少し難しめの漢字にはルビが振ってある。小学生の頃にこのような文学作品に親しんでいれば、今頃もう少し感性豊かな人間になっていただろうに、などと思った。
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2005年05月11日

為近和彦『忘れてしまった高校の物理を復習する本』(中継出版)



高校で習う物理が概観できる良書。受験用というわけではないので、これを読めば大学受験の物理の問題が解けるというわけではない。しかし、その分、物理学の発展の過程が克明に描かれている、すなわち、物理学の歴史に重点を置かれている。そこがまた良い。

「物理学の歴史の流れを考えると、実験が先の場合もあれば、理論が先の場合もあります。その歴史の流れのとおりに学習するのがもっとも効果的であり、先人たちの思考と同様に考えることができるようになるのです。」(p.285)

この箇所などを読むと、著者が、ヘッケルのいう「個体発生は系統発生をくり返す」を何となく直観的に把握している証左とも読める。

このような書物で物理学の概観を得た後、中学校レベルの『新しい科学の教科書』等を読んでみるのも、また為になるであろうと思われた。
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2005年05月10日

下村湖人『論語物語』(講談社学術文庫)



齋藤孝氏が頻りに勧めている(『声に出して読みたい日本語』『読書力』『理想の国語教科書赤版』『人間劇場』。他にもあるかも)ので読んでみた。面白い!

これは、もともと断片的な講義録である『論語』にストーリーをつけて物語化した著作だ。孔子と弟子のやりとりが生き生きと描かれており、『論語』の言葉の意味がよく伝わってくる。『論語』入門としても、かなりの価値があると思う。

高校生の時に、横山光輝のマンガ『史記』を読んで、漢文の内容に興味を持ったことがあった。このマンガを読んでいたおかげで、テストでほとんど本文を読まずに設問に答えることができたということもあった。『論語物語』も同じく、漢文に興味をもつためには、最適の著作の一つだと思う。今度、塾の高校生にでも勧めてみよう。

ところで、齋藤孝氏といえば、DAKARAのCMがちょっと面白い。ここで全てのCMがみられる、と書いてあるが、堂本剛のがない。それはともかく、DAKARAのCMか、齋藤孝氏のCMか分からないくらい、自説を宣伝している感じだ。意味がよく分からないのもあるし。それにしても、この人は今後もっとメジャーになりそうな気がする。
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2005年05月08日

平成教育委員会

平成教育委員会をみた。『頭がいい人、悪い人の話し方』が売れているという樋口裕一氏が出ていたが、専門である国語の問題も間違っていた。以前、この人の小論文関係の著作を本屋でパラパラと見たが、僕の感性とは合わなかった。

平成教育委員会は、ミリオネアなどとは違って、考えれば正解に辿り着ける問題が多い。そのあたり、好感が持てる。

今日、総合トップだったのは、華道「未生流笹岡」次期家元である笹岡隆甫。京大卒業らしく、結構できていた。15問中11問正解。樋口氏は7問正解。僕は一問だけ分からなかった。その問題は以下。

問 次の語源と意味に当てはまる言葉を書きなさい。

語源
天正10年、羽柴秀吉と明智光秀が戦った「山崎の戦い」で秀吉がこの地を押さえたことが勝敗を左右したことから

意味
勝敗の分かれ目

フジテレビHPより
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2005年05月07日

挿入・省略・同格、名詞、冠詞

今日は塾で、挿入・省略・同格、それに名詞と冠詞の単元をやった。

挿入は、コンマとコンマで囲まれているのがふつうだから、変なところでコンマが出てきたら挿入じゃないかと疑って、次のコンマを探せ、そして、挿入部分はカッコでくくってまずは無視、全体の文の流れをつかむようにしなさい、と教えた。省略は、言わなくても意味が分かるから省略されるという大原則を教えた上で、覚えるべきパターンとして、to不定詞の省略(toだけ残す)と接続詞の後の<主語+be動詞>の省略の二つを挙げた。同格は、名詞を並べるパターン、ofを使うパターン、thatを使うパターンを扱った。

ここまで解説した後、この三つに関する問題を解かせた。うまく解説と問題が対応していたので、授業の流れとしてはいい感じだったと思う。

次に名詞の解説を始めた。名詞は、大きく数えられる名詞と数えられない名詞に分かれること、さらに前者は普通名詞と集合名詞、後者は物質名詞と抽象名詞、固有名詞にそれぞれ分かれることを、図を描いて説明した。このとき、生徒を指名して、それぞれ具体例を挙げさせればよかったと今後悔している。その後、集合名詞だけ特に取り上げて、詳しく説明した。すなわち、「集合体を一つのまとまりとしてみる場合」と「集合体を構成する個々のものに重点を置く場合」にわけて、それぞれfamilyを使った例文を示して使い方を説明したのである。その際、後でちょこちょこっと絵を描いて、それぞれの違いを説明したが、はじめからていねいに絵を描いてそれで違いが分かるようにしておけばよかった。

冠詞は、不定冠詞の基本的な意味と、固有名詞に不定冠詞がつく場合を説明して、定冠詞に入ったところで時間切れとなった。次回は、不定冠詞と定冠詞の違いを、絵で説明したい。たとえば、a penとthe penでは、話し手と聞き手の共有する世界において、どのような違いがあるのか、を絵に描いて説明したい。そして、解説の内容をしっかりと確認できるような問題を用意しておいて、それを解かせたい。
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2005年05月03日

栗山実『キャリアアップの勉強法』(河出書房新社)

いわゆる「勉強法」の本だが、指導体験に基づく新しい手法が盛り込まれている。勉強法といっても、主に資格試験取得のための勉強法について書かれている。

あるテキストを読む際に、目次を利用して事前に全体像を把握しておく、という点では、マインド・マップの有機的学習法や、マインド・マップを利用したフォトリーディングと同じである。しかし、その独自性は、目次に対して「コメント」をつけるという点にある。これは「コメント法」とか「自己講義法」とか呼ばれているが、自分の持っている知識を総動員して、目次のみをヒントとして本文を予測し、それについて自分自身の言葉でコメントを発するという方法である。書くのではなく、話すという点にも独自性がある。

このように事前に目次に対してコメントしておくことで、目次に吸引力をつけるのがねらいだ。目次にたくさんの仮説や疑問符を取り付けておくと、「広範できめ細かい『問題意識と仮説』という網に、新情報(新しい本)という魚が一網打尽にかかってしまう」(pp.167-168)のだ。つまり、本文の理解と記憶が格段に強化されるわけである。

また、「テキストの目次を覚えておけば、その目次の言葉がヒントになって、テキストを見なくてもいもづる式に本文のほうへ連想の環が広がって」いく、つまり「明確に記憶された目次を媒介として、本のないところでも連想学習ができるように」(p.176)なるという効用もある。これだと、細切れのわずかな時間でも学習できることになる。

このようなコメント法を核とするシステム勉強法は、やはり司法試験の基本書の学習などに特に威力を発揮しそうだ。僕も、弁証法・認識論の基本書、あるいは心理学・教育学の教科書で試していきたい。

なお、本書の最後にあった「英単語クイズ」は、清水かつぞー『英単語ピーナツほどおいしいものはない』を彷彿とさせる内容だった。
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2005年05月02日

森信三『修身教授録』(到知出版)



天王寺師範学校での講義録だが、現在でも教師(志望者)必読の書といってもよさそうだ。本当に心が洗われるようである。

二度とない人生を、志を立て公のために尽くす(これが日本精神)にはどうすればよいか、ということが、具体的な実践につながる形で説かれている。明治以来今日まで、教育界には「この人を見よ」といえる偉人が生まれていないことを嘆き、偉人になるための必須要素たる情熱、意地、ねばり等についても触れている。

教育界の先哲として、吉田松陰とペスタロッチを特に重視していた。この二人については、著作や伝記を読んでみようと思う。

ところで、気になる文章があった。それは以下である。

「私は教育において、一番大事なものとなるものは、礼ではないかと考えているものです。つまり私の考えでは、礼というものは、ちょうど伏さっている器を、仰向けに直すようなものかと思うのです。
 器が伏さったままですと、幾ら上から水を注いでも、少しも内に溜まらないのです。ところが一たん器が仰向けにされると、注いだだけの水は、一滴も余さず全部がそこに溜まるのです。」(p.477)

ここを読んだとき、原田隆史氏の「心のコップを上向けて」という言葉が思い出された。実際、いっている内容は全く同じである。すなわち、生徒の側が先生を敬い、素直に先生のいうことをきく心の準備ができていなければ、何を言っても無駄である、ということだ。おそらく原田氏も、森信三のこの言葉から「心のコップ」という表現を思いついたのではないだろうか。研究熱心な原田氏のことだから、この本は読んでいるだろう。そんな気がする。

また、本書では「中間目標」として、「40になったら、必ず一冊の本を書く覚悟を、今日からしておいて戴きたい」と書いている。これは僕にとってもいい目標だ。40歳になったとき、一冊の本がかけるように、あと10数年、しっかり研鑽していきたい。
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